アルマ望遠鏡が太陽系外衛星の誕生につながる「周惑星円盤」を初観測したとお伝えしたばかりですが、その周惑星円盤で誕生した衛星が惑星になってしまう可能性を示した研究結果が発表されています。
アンティオキア大学のMario Sucerquia氏とマッコーリー大学のJaime Alvarado-Montes氏らが中心となった研究チームによる系外衛星に関する研究結果が、Phys.orgにおいて7月12日付で紹介されました。論文のプレプリントは6月27日付でarXivに登録されています。
研究では、若くて木星のように巨大な惑星の周囲に誕生したものの、惑星との重力の作用によって放り出されてしまった衛星のその後について論じています。
論文によれば、放り出された衛星の半分は惑星系からも追放されてしまったり、恒星や惑星と衝突したりして消えてしまいますが、残りの半分は追放や衝突を免れて新たな惑星の種となったり、それ自身が惑星になるとされています。研究チームはこうして放り出された衛星に対して「ploonets(プルーネット)」という呼び名を付けました。
ただ、原始惑星系円盤から誕生した惑星たちは比較的真円に近い形の軌道を公転するのに対し、放り出された衛星がもとになったプルーネットの軌道は楕円形をした、太陽系では冥王星のような軌道を描くことになるようです。近年太陽系では海王星よりも遠くにあって楕円形の公転軌道を巡る天体が相次いで見つかっていますが、もしかするとそのなかにもプルーネットが含まれているのかもしれません。
また論文では、プルーネットが存在するとした場合、過去に観測されてきた不可解な現象の幾つかが説明できるかもしれないとしています。
例として挙げられている天体の一つが恒星「KIC 8462852」です。この星では、時には数年間にも渡って継続する不規則な減光が何度か観測されています。系外惑星の探査では、惑星が恒星を横切る「トランジット」という現象が起こる際のごくわずかな恒星の減光を捉える手法がよく用いられますが、KIC 8462852の減光現象は惑星のトランジットとはパターンが異なります。
減光の原因としては彗星群や塵の円盤などが挙げられてきましたが、はっきりとした結論には至っていません。なかには「エイリアンが建造した巨大構造物が光を遮っているのではないか」とする説まで登場しています。
いっぽう今回の論文では、系外惑星とプルーネットの軌道はおおむね一致すると考えられることから、惑星がトランジットを起こす際の減光にプルーネットが不規則な影響を与えてしまい、それが鋭敏な「ケプラー」宇宙望遠鏡などにキャッチされた可能性を指摘しています。
また、今回の論文は恒星「HD 240430」にも言及しています。HD 240430に関して2017年に発表されたプリンストン大学の研究では、この恒星が地球サイズの岩石質の惑星を15個ほど飲み込んだ可能性が指摘されていますが、飲み込まれたのは惑星から放り出された複数のプルーネットだったということも考えられます。
現在の観測精度ではキャッチすることが困難なプルーネットですが、もしかすると数々の謎の現象を解明する鍵になるのかもしれません。
Image Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/Goddard Space Flight Center
https://phys.org/news/2019-07-ploonets-exiled-moons-astronomical-mysteries.html
文/松村武宏