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巨大衝突直後の原始惑星はドーナツ状の天体「シネスティア」になった?

sorae.jp 2019年9月6日 21時30分

カリフォルニア工科大学は9月4日、惑星の形成過程で生じる原始惑星どうしの巨大衝突に迫ったSimon Lock氏らの研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、同日付でScience Advancesに掲載されています。

■巨大衝突で原始惑星はドーナツ状の「シネスティア」に

初期の太陽系では、原始惑星どうしの巨大衝突が何度か生じていたと考えられています。初期の地球に火星クラスの原始惑星が衝突して月ができたとする「ジャイアント・インパクト」説もその一つですし、先日は「原始惑星の正面衝突によって木星の高密度なコアが破壊され、現在の低密度で大きなコアを生み出すきっかけになった」とする説も登場しました。

Lock氏らは昨年発表した研究において、巨大衝突直後の原始惑星は衝突エネルギーによってその一部が気化し、構成していた物質が高速で回転するドーナツ状の天体「synestia(シネスティア)」を形成すると提唱しました。

こちらのイラストは、巨大衝突によってシネスティアになった原始惑星の想像図です。シネスティアは原始惑星の一時的な姿で、徐々に冷えるにつれて単一(または複数)の原始惑星が再構成されることで消滅すると考えられています。

原始惑星の巨大衝突で生じたシネスティア(左)の想像図

昨年発表された研究では、初期の地球で発生した巨大衝突によるシネスティアのなかから月が誕生したとされており、月の組成が地球によく似ていることの理由を説明できるとされていました。

■ジャイアント・インパクト説の矛盾が解消されるか

今回の研究においてLock氏らのチームは、巨大衝突によってシネスティアを形成するに至った原始惑星の内部における圧力の変化をシミュレートしました。

その結果、原始惑星を構成する物質の一部が気化したり、衝突エネルギーによって加速された物質に遠心力が働いたりしたことで、原始惑星内部の圧力は従来の予想よりも低く、現在の地球の半分以下まで下がったとみられています。

発表では、この結果がジャイアント・インパクト説の抱える矛盾を解消するかもしれないと指摘しています。

地球内部の化学組成は地球が形成された頃の圧力から影響を受けているため、化学組成を調べれば地球が形成された当時の内部圧力を推測することができます。発表によると、マントルの化学組成から推定される地球形成当時の内部圧力は、現在のマントルの中間付近における圧力と同程度だったとみられています。

ところが、従来の研究で示されたジャイアント・インパクト説のシミュレーション結果はこれよりも高い圧力(マントルの深部)になったことを示しており、実際の地球とシミュレーションとの間に矛盾が生じていました。

しかし、シネスティアを考慮した今回の研究結果はジャイアント・インパクト後の内部圧力が予想より低くなった可能性を示しており、現実とシミュレーションの間にあった矛盾を解消するかもしれないのです。

今後、Lock氏らの研究チームは、巨大衝突後の圧力の変化が惑星内部の化学組成にもたらす影響や、シネスティアから原始惑星が再構成される過程でマントルや地殻がどのように形成されていったのかをより詳しく調べることを計画しています。

 

Image Credit: Ron Miller/Scientific American
https://www.caltech.edu/about/news/planetary-collisions-can-drop-internal-pressures-planets
文/松村武宏

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