ブレイクスルー財団は9月5日、同財団が毎年授与している「ブレイクスルー賞(Breakthrough Prize)」の1部門に、楕円銀河「M87」の中心に存在する超大質量ブラックホールの直接撮像に成功した「イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope:EHT)」チームが選ばれたことを発表しました。受賞については国立天文台からも発表されています。
ブレイクスルー賞は2012年に始まった比較的新しい国際的な学術賞で、「基礎物理学ブレイクスルー賞」「生命科学ブレイクスルー賞」「数学ブレイクスルー賞」の3部門から構成されています。このうち、今回EHTチームが受賞したのは基礎物理学ブレイクスルー賞となります。
受賞の理由はもちろん、世界初となるブラックホールの直接撮像に成功したため。ブラックホールを取り囲む高温のガスが発する光(電磁波)が太陽の65億個分という極めて重いブラックホールによって進行方向を大きく曲げられ、アインシュタインの一般相対性理論に基づいた予測通りブラックホールシャドウを取り囲むようにリング状に輝いている様子をEHTは見事に捉えました。
撮像成功の裏には、世界中の電波望遠鏡を同期させて1つの巨大な望遠鏡として機能させる観測手法「超長基線電波干渉計(VLBI)」を実現する技術や設備、得られたデータを解析するソフトウェア、これらを駆使して観測を実施した研究者たちの姿がありました。受賞対象となったのは合計347名で、この中には本間希樹氏(EHT Japan代表)をはじめとした国立天文台所属の11名も含まれています。
国立天文台水沢VLBI観測所長も務める本間氏は、受賞を受けたコメントのなかで、次のステップとして天の川銀河の中心に存在が確実視されている超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」の画像化や、ブラックホールの直接撮像に成功したM87から噴出しているジェットの謎にも迫りたいとしています。
なお、ブレイクスルー賞の賞金は3部門ともそれぞれ300万ドルとなっており、今回の2020年基礎物理学ブレイクスルー賞では347名に対して均等に配分されるということです。
Image Credit: EHT Collaboration
https://breakthroughprize.org/News/54
https://www.nao.ac.jp/news/topics/2019/20190906-eht.html
文/松村武宏