東京大学木曽観測所は10月8日、同観測所の超広視野CMOSカメラ「Tomo-e Gozen(トモエゴゼン)」によって、地球接近小惑星「2019 SU10」が発見されたことを発表しました。
今回見つかった小惑星は、2019年9月25日21時頃(日本時間、以下同)、ペガスス座の方向で夜空を移動しているところをトモエゴゼンによってキャッチされました。発見時の明るさは16.9等級と、とても肉眼では見ることができない暗さです。
翌日以降に実施された追加観測によって、地球に接近する軌道を描いていることが判明。10月4日に国際天文学連合(IAU)から仮符号「2019 SU10」が付与されました。公転周期は4.14年で、太陽光の反射率(アルベド)を0.1と仮定した場合の直径はおよそ15mと見積もられています。
軌道の計算結果から、地球への最接近は発見翌日の9月26日11時頃と判明しました。最接近時の地球からの距離は73万km(地球と月の間隔の約1.9倍)と離れていたので衝突はしませんでしたが、最接近の14時間前にその存在を観測することに成功したことになります。
■10mクラスの小惑星はその99パーセント以上が未発見木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に設置されているトモエゴゼン(観測装置の名称は木曽に縁のある巴御前が由来)は、超新星爆発や地球接近小惑星といった、突然観測される天体を捉えることが大きな任務です。
なかでも地球接近小惑星は、天体衝突という私たちの暮らしにも影響を及ぼす災害をもたらす可能性があります。たとえば、今年の7月25日に地球へ最接近した小惑星「2019 OK」は、直径が100m前後と見積もられています。このサイズの小惑星は落下すれば都市ひとつに甚大な被害をもたらしうることから「シティ・キラー」とも呼ばれており、地球への接近が警戒されています。
しかし、これより小さい小惑星でも、人命に関わる被害をもたらすことがあります。2013年2月15日にロシアへ落下して1000名以上を負傷させたチェリャビンスク隕石のサイズは、10m前後と推定されています。今回トモエゴゼンによって発見された2019 SU10はこれよりも大きい可能性があり、もしも人口密集地に落下すれば同等以上の被害が生じるかもしれません。
欧州宇宙機関(ESA)によれば、直径10mクラスの地球接近小惑星は100万個ほど存在しており、その99パーセント以上が未発見とされています。1年間に多くても数十個しか見つからないこのサイズの小惑星をいち早く、数多く見つけ出し、高い危険性をはらんだ小惑星を早期に把握することが、トモエゴゼンには期待されています。
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Image/Source: 東京大学木曽観測所
文/松村武宏