NASAのX線観測衛星「チャンドラ」によって、合体しつつある相互作用銀河に3つの超大質量ブラックホールが集まっているめずらしい様子が観測されました。
■1万~3万光年間隔で集まる3つの超大質量ブラックホール画像は「かに座」の方向、地球からおよそ10億光年先にある「SDSS J084905.51+111447.2」、略して「SDSS J0849+1114」と呼ばれる相互作用銀河です。この銀河を光学望遠鏡で観測すると、銀河核とみられる3つの明るい部分を中心に、複数の銀河が複雑に絡み合っているように見えます。
この銀河をX線で観測したところ、銀河核らしきそれぞれの部分に強いX線を放つ天体が3つ見つかりました。ここには各銀河の中心にあった超大質量ブラックホールが1万光年から3万光年の間隔で集まっているとみられています。
可視光線(人の目に見える光)は銀河のガスや塵に遮られてしまいますが、X線や赤外線は通り抜けて観測することができます。チャンドラの観測データを使い今回の研究を行ったジョージ・メイソン大学(アメリカ)のRyan Pfeifle氏は、「3重に集まった活動的な超大質量ブラックホール」の強力な証拠だとしています。
これらのブラックホールはいずれ接近・合体するだろうとみられていますが、3つのブラックホールの相互作用によって、合体の過程は2つのブラックホールが合体する場合よりも速やかに進むだろうと予想されています。
画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡および全天の約4分の1をカバーする「スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)」の観測データ(背景)に、チャンドラによるX線観測データ(左下)が重ねて表示されています。
Image: X-ray: NASA/CXC/George Mason Univ./R. Pfeifle et al.; Optical: SDSS & NASA/STScI
Source: chandra
文/松村武宏