今年の7月13日に打ち上げられたX線観測衛星「Spektr-RG」から、最初の観測となる「ファーストライト」で撮影された画像が届きました。天の川銀河の伴銀河「大マゼラン雲」および8億光年先にある2つの銀河団を捉えた画像が、ドイツ航空宇宙センター(DLR)から公開されています。
■7つのレンズを持つドイツ製のX線観測装置「eROSITA」Spektr-RGはロシアとドイツが中心となって開発した観測衛星で、ドイツ製の「eROSITA(extended ROentgen Survey with an Imaging Telescope Array)」とロシア製の「ART-XC(The Astronomical Roentgen Telescope – X-ray Concentrator)」という2つのX線観測装置を搭載しています。今回ファーストライトが実施されたeROSITAは同じ構造を持つ7つの望遠鏡モジュールから構成されており、広範囲のX線観測を主目的に開発されました。
こちらがeROSITAによって最初に撮影された、大マゼラン雲のX線画像(疑似カラー)です。中央付近に写っている青っぽく着色された円形の天体は、超新星「SN 1987A」の超新星残骸。ここから飛来したニュートリノが、かつて岐阜県で稼働していた観測装置「カミオカンデ」によってキャッチされました。
大マゼラン雲は地球からおよそ16万3000光年と宇宙全体では比較的近くにあり、これまでにも数多くの観測装置によって撮影されてきたことから、eROSITAのファーストライトに選ばれています。
続いて撮影されたのは、地球から8億光年離れた場所にある銀河団「A3391」と「A3395」です。
右側の画像はX線のエネルギーを色の違い(赤、緑、青)で示したもので、銀河団に含まれる摂氏数百万度の熱いガスがX線で明るく輝いていることが見て取れます。いっぽう、左側の画像では銀河団を結ぶ構造が疑似カラーによって強調されており、銀河団どうしの相互作用が示唆されています。
■太陽から見て地球の裏側にあたる「L2」に到着7月にロシアの「プロトン」ロケットで打ち上げられたSpektr-RGは地球を周回する軌道を離れ、太陽と地球の重力が釣り合う「ラグランジュ点」のひとつである「L2」に向かっていました。L2は太陽から見ると地球の裏側(地球から見ると太陽とは反対側)にあるポジションで、10月21日には無事L2に到着したことがロスコスモスから発表されています。
今回DLRから公開された画像は、L2到着直前の10月17日から20日にかけて撮影されました。Spektr-RGは4年に渡る観測期間中に5万から10万個もの銀河団を観測し、宇宙の大規模構造をマッピングすることで、この宇宙を拡大させ続けているダークエネルギー(暗黒エネルギー)の謎に挑戦する予定です。
Image Credit: DLR
Source: DLR
文/松村武宏