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合体銀河の中心に3個目の超大質量ブラックホールを発見

sorae.jp 2019年11月23日 17時39分

合体銀河「NGC 6240」は、非常に早いペースで星が誕生する「スターバースト銀河」の一例として知られています。この銀河の中心には2つの超大質量ブラックホールが存在するとみられていましたが、実は全部で3つあったことが明らかになりました。

■太陽の9000万倍以上も重いブラックホールが3つ集まっていた

「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影したNGC 6240(Credit: NASA, ESA, the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration, and A. Evans (University of Virginia, Charlottesville/NRAO/Stony Brook University))

NGC 6240は、へびつかい座の方向およそ3億5000万光年先にある合体銀河です。銀河の合体によって形が崩れているものの、その周囲には差し渡し30万光年に渡ってガスが広がっています。天の川銀河の円盤部のサイズがおよそ10万光年ですから、およそ3倍程度の大きさを持つ銀河であるといえます。

天の川銀河では太陽ほどの重さの恒星が毎年1つ誕生するくらいのペースで新しい星が形成されていると考えられていますが、NGC 6240ではその25~80倍のペースで星々が誕生しています。宇宙全体のスケールからすれば天の川銀河の比較的近くにあることから、NGC 6240はスターバースト銀河のひとつとしてよく研究されています。

今回、ゲッティンゲン大学のWolfram Kollatschny氏らは、チリのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT:Very Large Telescope)」を使ってNGC 6240を観測しました。取得されたデータを分析したところ、NGC 6240の中心部に位置する3000光年ほどの範囲には、3つの超大質量ブラックホールが存在するらしいことが判明しました。

これまでの研究では、NGC 6240には銀河どうしの合体によって集まった2つの超大質量ブラックホールが存在するとみられていました。ところが、今回得られたVLTによる高解像度の観測データからは、そのうちの片方が単一のブラックホールではなく、実は650光年ほど離れた2つの超大質量ブラックホールからなるブラックホール連星だったことが明らかになったのです。

ブラックホールの質量は、3つとも太陽の9000万倍以上とみられています。天の川銀河の中心に存在するとされる超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」が太陽のおよそ400万倍とされていますから、NGC 6240ではその20倍以上も重いブラックホールが3つも集まっていることになります。

■複数のブラックホールが銀河の進化を後押しする?

VLTによる観測結果(右上の枠内)をハッブルの画像に重ねたもの。これまで1つだと思われてきた片方のブラックホールが実は2つ(S1とS2)だったことが判明した(Credit: P. Weilbacher (AIP), NASA, ESA, the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration, and A. Evans (University of Virginia, Charlottesville/NRAO/Stony Brook University)

研究チームによると、超大質量ブラックホールを持つ複数の銀河が同時に合体する場合、2つの銀河が合体する場合と比べて銀河の進化が促進される可能性があるといいます。Weilbacher氏は、今回の観測結果を「この理論に結びつく初めての観測例」だとコメントしています。

天の川銀河の近傍ではまれなケースと考えられてきた3つの超大質量ブラックホールを持つNGC 6240の銀河核は、銀河の進化について新しい知見をもたらすことになりそうです。

 

関連:歪な銀河形状とブラックホール連星

Image: P. Weilbacher (AIP), NASA, ESA, the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration, and A. Evans (University of Virginia, Charlottesville/NRAO/Stony Brook University
Source: AIP
文/松村武宏

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