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太陽の接近観測で明かされた太陽風の磁場の反転現象

sorae.jp 2019年12月10日 11時15分

太陽はよく研究されている天体のひとつですが、表面(摂氏およそ6000度)よりもはるかに高温なコロナ(摂氏およそ100万度)をはじめ、未解明の謎も残されています。NASAの太陽接近探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」による接近観測によって、その謎の一端が解き明かされつつあります。

■局所的な磁場の反転や、予想以上に速い太陽風の回転速度

太陽に接近する「パーカー・ソーラー・プローブ」の想像図(Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben)

2018年8月に打ち上げられたパーカー・ソーラー・プローブは、できるだけ太陽に近づいて観測を行うために、強烈な放射から機器を保護するための耐熱シールドを装備しています。今年9月に実施された接近観測では、太陽からおよそ2400万km(約0.16天文単位)まで近付きました。

12月4日付でNatureに掲載された4つの論文では、パーカー・ソーラー・プローブによる観測データをもとに、これまで知られていなかった太陽周辺の環境が明らかにされています。そのうちの一つが、太陽風の磁場の反転現象です。

太陽から放出されたプラズマの流れである太陽風は、地球の付近では比較的均一な流れとして観測されます。ところが、水星よりも内側の領域では太陽風の磁場が局所的に反転していることが、パーカー・ソーラー・プローブの観測によって初めて明らかになりました。研究者が「スイッチバック」と呼ぶこの現象は、ひとつが数秒間から数分間に渡り観測されており、太陽に近い領域における太陽風のダイナミックな動きを象徴する発見といえます。

また、地球の付近では太陽から放射状に流れているように観測される太陽風も、自転する太陽から放出されているため、太陽に近いところでは自転にそって回転するように流れていると考えられてきました。この流れはパーカー・ソーラー・プローブによって実際に観測されましたが、その回転速度は理論上の予測値より10倍~20倍も速いことが判明しました。研究に参加したJustin Kasper氏(ミシガン大学)は「我々は太陽について何か基本的なことを見落としている」とコメントしています。

■今後の観測で何が明らかになるのか?

太陽の周辺に広がっているとされる「塵のない領域」の想像図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center/Scott Wiessinger)

パーカー・ソーラー・プローブは7年間予定されているミッションのなかで、金星に複数回接近(スイングバイ)して軌道を少しずつ調整しながら、最終的には太陽におよそ616万km(約0.04天文単位)まで近付きます。

今後の接近観測では、太陽に近すぎるために塵さえも蒸発してしまうとされる「塵のない領域」の確認が期待されています。この領域が観測によって確かめられたことはありませんが、パーカー・ソーラー・プローブに搭載されている光学観測装置「WISPR」の観測データからは、太陽からの距離がおよそ1100kmのあたりから塵が少なくなり始めていることが示されています。

また、太陽に近い場所では、太陽風を伝わる「アルヴェーン波」(※プラズマのなかを磁場に沿って伝わる波の一種)の一部が、通常のアルヴェーン波より4倍のエネルギーを持っていることもわかりました。アルヴェーン波はコロナとの関係も指摘されており、パーカー・ソーラー・プローブの観測によって、太陽最大の謎ともいえるコロナの加熱について新しい知見が得られることも期待されています。

パーカー・ソーラー・プローブによる次の太陽接近観測は、2020年1月下旬に実施されます。これに先立ち、今月26日には太陽最接近時の高度を下げるための2度目の金星スイングバイが行われる予定です。

 

Image Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben
Source: NASA /  ミシガン大学
文/松村武宏

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