研究の最先端で活躍する天体望遠鏡が建設されている土地、そこに広がる星空はどのように見えるのでしょうか。この画像はヨーロッパ南天天文台(ESO)のパラナル天文台で撮影された、「いて座」から「さそり座」にかけての星空。ESOのエンジニアであり天体写真家でもあるStéphane Guisard氏によって撮影されました。パラナル天文台にはESOの「超大型望遠鏡(VLT)」などが建設されています。
左上から中央下に向かって斜めに広がる天の川には「干潟星雲(M8)」や「三裂星雲(M20)」といった散光星雲が写っていますが、それ以上に目立つ帯状の黒い煙のようなものは、高密度で塵を多く含む暗黒星雲です。いて座の方向にはたくさんの星が集まっている天の川銀河の中心がありますが、暗黒星雲は向こう側からの光(可視光線)をさえぎってしまうため、赤外線、電波、X線などを使わないと観測することができません。この帯の向こう約2万7000光年先には、太陽のおよそ400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」があると考えられています。
また、右側に見えるカラフルな星雲は地球からおよそ400光年先にある「へびつかい座ρ(ロー)分子雲」と呼ばれる星形成領域です。分子雲はへびつかい座からさそり座に渡って広がっていて、黄色い領域の中央付近にはさそり座のアンタレスが輝いています。
上掲の画像は3色の異なるフィルターで撮影されたおよそ1200枚の画像を合成したもので、露光時間は合計200時間に及ぶといいます。ESOからは2009年9月21日に公開されています。
Image Credit: ESO/S. Guisard
Source: ESO
文/松村武宏