こちらは「りゅう座」の方向およそ4億2000万光年先にある銀河「Arp 188」を撮影したもの。自身の円盤部の幅よりもずっと長い尾が伸びているのが印象的な銀河です。丸っこい体と長い尾を持つおたまじゃくしを連想させることから「Tadpole Galaxy(おたまじゃくし銀河)」とも呼ばれています。
この長い尾は、別の銀河との相互作用によってArp 188から星やガスが引き出されたために形成されたと考えられています。近くに別の銀河は存在しないように思えますが、実はArp 188の左上の部分に重なるようにして、その向こう側におよそ30万光年(尾の長さと同じくらい)離れていると推定される相手の銀河が見えています。
おたまじゃくしがカエルへと成長するにつれて尾を失うように、Arp 188の尾もいずれ失われると考えられています。尾のあちこちに見える青い光は相互作用にともなって形成された若い星や星団の輝きですが、これらはいずれArp 188のハローを周回する球状星団になるとみられています。特によく目立つ2つの星の集まりは、後に矮小銀河に進化するかもしれないといいます。
また、Arp 188の周囲には幾つもの天体が見えていますが、これらの多くはさらに遠くの銀河からの光です。画像の範囲には、およそ3000もの銀河が写り込んでいるとされています。この画像は2002年3月に「ハッブル」宇宙望遠鏡に取り付けられたばかりの「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」によって撮影され、同年4月30日に公開されたものです。
Image Credit: NASA, Holland Ford (JHU), the ACS Science Team and ESA
Source: ESA/Hubble / NASA
文/松村武宏