こちらはさそり座の方向およそ4000光年先にある「NGC 6302」、別名「バタフライ星雲」と呼ばれる惑星状星雲です。惑星状星雲は、太陽のように超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星が赤色巨星になった頃に周囲へ放出したガスによって形成されるもので、赤色巨星を経て白色矮星に進化していく熱い中心星が放射する紫外線によってガスが電離することで輝くとされています。
惑星状星雲の形はさまざまで、なかには整った円形をしているものもありますが、バタフライ星雲の場合は中心から双方向へと吹き出すようにおよそ3光年に渡りガスが広がっているために、地球からは蝶の羽のような形に見えています。この画像では羽を縁取るようにガスの一部が赤く輝いているように見えますが、これはバタフライ星雲における鉄の分布を強調して示したもの。白い部分のあちこちに見える黄緑色は窒素、青色は酸素の分布に対応しています。
白色矮星になりつつあるバタフライ星雲の中心星は表面温度がまだ摂氏20万度を超えており、可視光と紫外線で明るく輝いているとみられていますが、濃密な塵のトーラス(ドーナツ形の構造)にさえぎられているために直接見ることはできません。太陽もいずれは赤色巨星となってガスを放出し、その後に白色矮星へ進化すると考えられており、こうした惑星状星雲は数十億年後の太陽系の姿を予想させるものと言えます。
画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」によって取得されたデータをJudy Schmidt氏が処理することにより作成されたもので、Astronomy Picture of the Day に2020年7月21日付でピックアップされています。
Image Credit: NASA, ESA, Hubble; Processing & License: Judy Schmidt
Source: APOD
文/松村武宏