こちらは「いて座」の方向およそ1億2000万光年先にある渦巻銀河「NGC 6902」の画像です。地球からはNGC 6902が正面に近い角度から観測できる位置関係にあり、明るいバルジから始まった渦巻腕がきつく巻かれながら背景へ溶け込むように伸びている様子がよくわかります。
中心に棒状の構造がある天の川銀河のような棒渦巻銀河とは違い、NGC 6902には目立った棒状の構造はみられません。見事に渦巻くその様子をじっと見つめていると、筆者には静止画のはずの銀河がゆっくりと回転しているようにも見えてきます。
画像を撮影したのはヨーロッパ南天天文台(ESO)のパラナル天文台に建設された「SPECULOOS(スペキュラース)」プロジェクトの望遠鏡のひとつ「ガニメデ」です。褐色矮星を周回する地球サイズの太陽系外惑星の発見を目指す同プロジェクトが用いる直径1mの望遠鏡4基には、それぞれ木星のガリレオ衛星にちなんだ名前(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)が付けられています。
NGC 6902はSPECULOOSプロジェクトが本来の観測対象とする天体ではありませんが、ガニメデにとって最初の観測となる「ファーストライト」の対象として撮影されました。画像はESOが毎週公開している「Picture of the Week(今週の一枚)」のひとつとして2019年2月25日に公開されています。
Image Credit: ESO/SPECULOOS Team/E. Jehin
Source: ESO
文/松村武宏