こちらの画像に写っているのは「はくちょう座」の方向およそ2400光年先にある超新星残骸「はくちょう座ループ(英:Cygnus Loop)」のごく一部。オレンジ色は水素、水色は酸素の分布を示しています。スマートフォンの壁紙一覧で見かけるCGのようでもありますが、本物の天体を撮影した画像です。
はくちょう座ループは、今から1万~2万年前に超新星爆発を起こした太陽の20倍ほどの質量があった恒星の残骸だと考えられています。画像は超新星残骸の外縁部分を示す衝撃波を捉えたもので、ベールのような構造は爆発で放出された物質が星間物質と衝突し、相互作用することで形作られるといいます。
はくちょう座ループの外縁は毎秒約350kmの速度で拡大し続けており、残骸は中心から60光年ほどの範囲にまで広がっているとされています。地球から見たはくちょう座ループは満月45個分ほどの領域に広がっていて、文末に示した全体像はアメリカのキットピーク国立天文台で撮影された9つの画像をつなぎ合わせることで作成されています。
サイズが巨大であるが故に、左側の一部は「NGC 6992」や「IC 1340」、右側の一部は「NGC 6960(魔女のほうき星雲)」や「ピッカリングの三角形」といったように、はくちょう座ループの各部分は個別の星雲としても名前が付けられています。また、はくちょう座ループ全体では「網状星雲(英:Veil Nebula)」とも呼ばれています。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡に搭載されていた「広域惑星カメラ2(WFPC2)」によって撮影されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の「今週の一枚」として2020年8月24日付でピックアップされています。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, W. Blair
Source: ESA/Hubble / NOAO
文/松村武宏