2020年10月6日夜、地球と火星が近づく最接近のタイミングを迎えます。これは地球と火星の公転速度が異なるために約2年2か月ごとに起きる現象で、国立天文台によると最接近の時刻は23時18分、最接近時の地心距離(※)は6207万kmとされています。
※…地球の中心から天体の中心(この場合は火星の中心)までの距離
今回の最接近時における火星の視直径は約22.6秒角(満月のおよそ80分の1)、明るさは木星よりも明るいマイナス2.6等とされています。肉眼で火星の丸い形や地表の様子を識別することはできませんが、望遠鏡を使えば地表の特徴も観察しやすい時期を迎えています。なお、冒頭の画像は国立天文台の50センチ公開望遠鏡を使って撮影されています。
普段の火星は星々の中を西から東へと移動(順行)していますが、最接近の時期はこれとは逆に東から西へと移動(逆行)しているため、再び順行に転じる11月中旬まで火星が空に昇る時間は徐々に早くなっていきます。最接近の瞬間を見逃したとしても火星が急に離れていってしまうわけではありませんし、国立天文台によると11月初旬まではマイナス2等以上の明るさで輝くといいますから、この先1か月間ほどは夜空に輝く火星を観望しやすい時期が続くことになります。
なお、火星の軌道の形は地球の軌道と比べて少しつぶれた楕円形をしているため、最接近時の距離や火星の明るさは毎回異なります。次回の最接近は2022年12月1日ですが、地心距離は8145万kmまで広がり、明るさは最大でもマイナス1.8等。この次に火星がマイナス2等以上で輝くほど地球に近づくのは、13年後の2033年7月とされています。
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Image Credit: 国立天文台
Source: 国立天文台
文/松村武宏