岡山大学は12月23日、極低温や低圧の条件下で、水と気体が存在する場合に氷とガスハイドレートのどちらが生じるかを理論的に正確に予測する方法を開発したことを発表しました。そして研究チームは、実際にこの方法を外惑星の衛星や冥王星などに適用し、その表面や内部の氷の状態を理論的に明らかにすることに成功しました。
水は宇宙空間では蒸発するか、氷の状態で存在しています。
そして、恒星系で恒星から十分に遠く水が氷として存在できるラインを雪線(スノーライン)といいます。太陽系だと雪線は火星と木星の間、小惑星帯がある辺りにあります。
この雪線よりも外側の惑星やその衛星などには、水が氷の状態で存在できるために、大量の氷が存在しています。
ところで、外惑星やその衛星、冥王星などにおいて、水とメタン、窒素などの気体が同時に存在する場合に、ガスハイドレートを生じる可能性がありますが、どのような条件下でガスハイドレートを生じるかについてはよく解っていませんでした。ちなみに、ガスハイドレートとは「メタン、窒素などの気体を取り込んだ氷」のことで、優れた断熱性があります。
そこで、研究チームは、どのような温度、圧力、組成比(気体と水の組成比)などの条件下で、ガスハイドレートが生じるかを理論的に正確に予測する方法を開発しました。そして、この方法を適用して、外惑星の衛星、冥王星などにおいて、氷がどのような状態で存在しうるかを調べました。
すると、木星の衛星であるエウロパやガニメデのように、希薄な酸素大気と水が同時に存在する場合には普通の氷ができることが解り、気圧が高く温度が低い土星の衛星タイタンや非常に温度が低い冥王星などでは普通の氷はできず、窒素やメタンを含むガスハイドレートだけができることが判明しました。
これらのなかでも特に注目したいのは冥王星です。冥王星では、コアに含まれる放射性物質の崩壊熱によって氷が溶かされ、厚い氷の地殻の下には広大な内部海が存在すると考えられています。
ただ、非常に低温な冥王星でなぜ内部海が凍りついてしまわないのか、についてはよく解っていませんでした。
しかし、2019年に北海道大学などの研究チームが、冥王星の内部海と氷の地殻の間にガスハイドレートの層があれば、ガスハイドレートの層の断熱効果によって、内部海が凍りついてしまわない可能性があるとする考え方を発表しています。研究チームによれば、今回の研究成果は、北海道大学の研究チームのこの考え方を強く支持するものであるといいます。
もしかしたら、冥王星の内部海には、ガスハイドレートの層に守られて、何かしらの生命が存在するかもしれませんね。
Image Credit: NASA/JPL/University of Arizona/北海道大学
Source: 岡山大学
文/飯銅重幸