こちらは地球からおよそ6500光年離れた輝線星雲「IC 2944」の一部を捉えた画像です。IC 2944はケンタウルス座ラムダ星の方向に見えることから「ラムダケンタウリ星雲(ケンタウルス座ラムダ星星雲)」とも呼ばれています。
IC 2944は、若い恒星が放射する紫外線で電離した水素ガスが赤く輝くHII領域として知られています。画像には散開星団を成す星々が黒ではなく赤を背景に輝いている様子だけでなく、大小さまざまな暗黒星雲の塊が点在している様子も捉えられています。
この暗黒星雲は「Bok globule(ボックグロビュール)」と呼ばれるガスや塵などが集まった比較的小さな高密度の分子雲で、HII領域に見られる天体です。ボックグロビュールからは新しい星が形成されることがありますが、IC 2944にあるボックグロビュールは近くにある熱くて若い星からの強力な紫外線を浴びて侵食され続けています。
塵を多く含む暗黒星雲は可視光線を遮ってしまうため、ボックグロビュールの内部を調べるには赤外線やサブミリ波での観測が必要です。ヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、IC 2944のボックグロビュールは内部で星形成が起きておらず、星が誕生する前に消えてしまう可能性があるようです。
なお、1950年に見つかったIC 2944のボックグロビュールは、発見者のA. David Thackeray氏にちなんで「Thackeray’s Globules(サッカレーのグロビュール)」とも呼ばれています。冒頭の画像はチリのパラナル天文台にあるESOの「超大型望遠鏡(VLT)」によって撮影されました。
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Image Credit: ESO
Source: ESO (1) / ESO (2)
文/松村武宏