アメリカ航空宇宙局(NASA)は1月6日(現地時間、以下同様)、有人月面探査計画「アルテミス」などで用いるべく開発が進められている新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」を構成するコアステージの地上試験「グリーンラン(Green Run)」について、早ければ1月17日にも最終段階のエンジン燃焼試験「ホットファイア(hot fire)」が実施される見通しであることを明らかにしました。
グリーンランはSLSのコアステージに搭載されているエンジン、推進剤(液体水素と液体酸素)のタンク、誘導制御システムなどが一体となって動作する試験で、8つの段階に分かれています。2020年1月にミシシッピ州のジョン・C・ステニス宇宙センターのB-2テストスタンドにコアステージが据え付けられて以降、新型コロナウイルス感染症への対策にともなう中断を挟みつつも、各段階の試験が順を追って進められてきました。
2020年12月20日にはグリーンランの7段階目の試験にあたる「ウェットドレスリハーサル(wet dress rehearsal)」が実施されています。この試験では合計73万3000ガロン(約277万リットル)に達する極低温の推進剤が初めてSLSに充填・排出されました。試験は予定よりも数分早く自動停止したものの、NASAマーシャル飛行センターのJulie Bassler氏によると試験中のコアステージは正常に機能しており、タンクをおよそ2時間に渡り満たしていた推進剤の漏洩も認められなかったとのことです。
▲12月20日に実施されたウェットドレスリハーサルの様子▲
グリーンラン最終段階の試験にあたるホットファイアでは、ウェットドレスリハーサルと同様にタンクを推進剤で満たした上で、コアステージに4基搭載されているRS-25エンジンがすべて点火されます。エンジンは実際の飛行時間と同じ最大8分間に渡り稼働し、飛行中のコアステージ全体のパフォーマンスがシミュレートされることになります。
なお、ホットファイアを控えたコアステージは2021年11月に予定されているアルテミス計画最初のミッション「アルテミス1」の打ち上げに用いられます。アルテミス1はSLSや新型宇宙船「オリオン」の無人飛行試験にあたるミッションで、試験を終えたコアステージはフロリダ州のケネディ宇宙センターへと移送され、SLSを構成する他のハードウェアやオリオン宇宙船の初号機と統合された上で、今年秋のアルテミス1実施を待つことになります。
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Image Credit: NASA
Source: NASA
文/松村武宏