アメリカ航空宇宙局(NASA)は1月12日、太陽電池パネルの経年劣化によって低下しつつある国際宇宙ステーション(ISS)の発電能力を補うために、ボーイング製の太陽電池パネル6基を新たに取り付ける予定であることを発表しました。
1998年に建設が始まり2011年に大規模な構成要素の組み立てが完了したISSは、現在8基の太陽電池パネルが供給する電力によって稼働しています。太陽電池パネルはパネル自体や土台となっているトラスを回転させることで向きが変えられる構造になっており、太陽を追尾したり発電量を調整したりすることが可能です。
NASAによるとISSの太陽電池パネルの耐用年数は15年で、2000年12月から2009年3月にかけて4回に分けて設置された太陽電池パネルは一部がすでに耐用年数を超えたか間もなく迎えようとしており、今のところ問題なく機能してはいるものの予想通り劣化の兆しを見せているといいます。
今回発表された太陽電池パネルの増設は、低下が避けられないISSの発電能力を底上げするための取り組みです。発表によると、太陽追尾や配電といった既存のシステムを最大限活用するため、現在稼働中の太陽電池パネル(1基のサイズは35.5m×11.6m)の上に19m×6mという小さなサイズの新しいパネルが重なるように取り付けられます。
新しい太陽電池パネルは6基あわせて最大120キロワットの発電能力があり、既存の太陽電池パネル(増設されない2基および増設によって一部が隠される6基)による95キロワットとあわせて最大215キロワットの発電能力が確保されるといいます。現在最大160キロワットとされるISSの発電能力は新しく高効率な太陽電池パネルの増設によって2~3割の増強が見込まれており、NASAは既存の太陽電池パネルが設置された当初の発電能力がおおむね回復するとしています。
新しい太陽電池パネルはスペースXの無人補給船「カーゴドラゴン」に搭載され3回に分けてISSに運ばれるとされており、最初の打ち上げは2021年中に予定されています。ISSの維持を担い、NASAやその国際パートナーが望むのであれば2030年以降も安全に運用できるとするボーイングは、この増設によって今後数年間はISSの機能を最大化できるとしています。
Image Credit: Boeing
Source: NASA / Boeing
文/松村武宏