Infoseek 楽天

イギリス宇宙局とロールス・ロイスが提携、宇宙での原子力利用を研究

sorae.jp 2021年1月16日 10時58分

(Credit: Rolls-Royce)

イギリス宇宙局とロールス・ロイスは1月12日、宇宙探査における原子力の利用に関して研究を進めるべく提携することを発表しました。

現在、宇宙探査における推進と発電の双方に利用できるエネルギー源として改めて原子力が注目されています。今回の提携は、今後数十年間の深宇宙探査における豊富なエネルギー源としての原子力の可能性を探求するものとされています。

宇宙探査での原子力利用は新しいアイディアではなく、20世紀の米ソ冷戦時代には原子炉の熱で温められた水素などの推進剤を噴射することで推進力を得る核熱推進(NTP:Nuclear Thermal Propulsion)ロケットエンジンが研究されています。たとえばアメリカ航空宇宙局(NASA)では1961年から1972年にかけて「NERVA(Nuclear Engine for Rocket Vehicle Application)」プログラムのもとで核熱推進ロケットエンジンの開発が進められていました。

関連:NASA長官が核熱推進ロケットエンジンに言及、実用化に意欲示す

今回の発表によると、核熱推進ロケットエンジンは現在主流の化学燃料ロケットエンジンと比べて2倍効率が良く、地球から火星までの飛行に要する期間を現在の半分となる3~4か月に短縮できる可能性を秘めているといいます。将来の火星有人探査ではミッション期間の長さが課題のひとつとされていますが、飛行期間が短縮されればそのぶん酸素、水、食糧といった物資を減らすことができますし、宇宙放射線の被ばく線量を抑えることにもつながります。

また、現在の宇宙船や探査機は主に太陽電池を使って電力を得ています。太陽電池には太陽光さえ浴びることができれば発電できるメリットがあるものの、太陽から遠く離れると発電量が減り、夜や天体の影では発電できないというデメリットがあります。いっぽう、原子力なら太陽から遠く離れた宇宙船でも電力を得ることができますし、月の南極域への建設が構想されている月面の活動拠点「ムーンビレッジ」でも原子力の利用が検討されているように、夜が2週間続く月のような環境でも安定して電力を確保することが可能です。

関連:未来の活動拠点「ムーンビレッジ」を見据えた月面で膨らむ4階建て居住室のコンセプト

イギリス宇宙局長官のグラハム・ターノック氏は宇宙探査における原子力について「火星以遠の深宇宙探査を可能とする画期的なコンセプトです」と期待を寄せており、ロールス・ロイスの英国上級副社長を務めるデーブ・ゴードン氏は「宇宙で利用される将来の原子力技術を定義する先進的なプロジェクトにイギリス宇宙局とともに取り組むことができて喜ばしく思います」とコメントしています。

 

Image Credit: Rolls-Royce
Source: イギリス宇宙局 / ロールス・ロイス
文/松村武宏

この記事の関連ニュース