この動画は「スプライト(sprite)」と呼ばれる現象を撮影したものです。スプライトは一般的に「レッドスプライト(red sprite、超高層紅色型雷放電)」のことを指し、地球大気圏中の高度20-90kmの成層圏から中間圏にかけての領域付近で起こる、放電によって発生する発光現象のことです。一般的な雷(雷放電)とは異なる発光現象ですが、雷に付随して発生するといわれています。
この発光現象は1989年に偶然撮影されてから知られるようになり、1990年代以降研究が進みましたが、根本的な原因は不明のままです。一見スプライトは巨大なクラゲのようにも見えますが、「sprite」とは本来「妖精」のことで、妖精のように突然現れることから名付けられました。発光自体は0.1秒程度の時間なので、肉眼では一瞬しか見ることができません。
この動画は2019年半ばに撮影されたもので、1秒間に約100,000コマという高速度で撮影されています。「爆弾」のように投下されたスプライトが、静止画で表示されている複数の突起へと成長していく様子が見事に捉えられています。しかし、残念ながら、このような動画から得られる視覚的な手がかりだけでは、スプライトの発生メカニズムの謎を完全に解明することはできません。
この動画は2021年1月4日付けでAstronomy Picture of the Day(通称APOD)に掲載されました。APODではたびたびスプライトについて取り上げており、とくに2015年12月20日には国際宇宙ステーション(ISS)から撮影されたスプライトの画像が紹介されています。
画像の右上に注目してみると、光り輝く雷雲の上方に赤いスプライトが見えます。こちらではその画像が拡大されています。今後は地上からの観測のみならず、宇宙空間からの観測にも期待が寄せられています。
Video Credit: Matthew G McHarg, Jacob L Harley, Thomas Ashcraft, Hans Nielsen
Image Credit: ISS, Expedition 31 Crew, NASA
Source: APOD (1)(2)、NASA、JAXA
文/吉田哲郎