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NASA新型ロケット「SLS」エンジン燃焼試験実施、予定の稼働時間には届かず

sorae.jp 2021年1月19日 17時44分

稼働する4基のRS-25エンジン(Credit: NASA)

アメリカ航空宇宙局(NASA)は1月16日(現地時間、以下同様)、開発中の新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」を構成するコアステージのエンジン燃焼試験「ホットファイア(hot fire)」をミシシッピ州のジョン・C・ステニス宇宙センターにおいて実施しました。予定では実際の飛行時間と同じ約8分に渡りエンジンが稼働し続けることになっていましたが、点火から1分強が経った時点で停止しています。

SLSは有人月面探査計画「アルテミス」などで用いるべく開発が進められている大型ロケットで、2011年に退役したスペースシャトルに搭載されていた「SSME」の改良版である「RS-25」エンジンを4基搭載したコアステージ、2基の固体燃料ロケットブースター、月に42トンのペイロード(搭載物)を運べる「EUS」(Exploration Upper Stage、探査上段)や初期の運用で用いられる「ICPS」(Interim Cryogenic Propulsion Stage、暫定的な極低温推進ステージ)といった上段ステージなどから構成されています。

SLSの構成を示した図。赤枠で囲んだ部分がコアステージおよび4基の「RS-25」エンジン(Credit: NASA、赤枠は筆者による)

当初の見込みよりも早く1月16日に実施されたホットファイアは全部で8段階に及ぶコアステージの地上試験「グリーンラン(Green Run)」の最終段階にあたる試験で、4基のRS-25エンジンすべてを稼働させて飛行中のコアステージ全体のパフォーマンスがシミュレートされることになっていました。NASAによると、合計73万3000ガロン(約277万リットル)に達する極低温の推進剤(液体水素と液体酸素)の燃焼速度に応じて、エンジンの稼働時間は8分5秒~8分13秒と推定されていました。

エンジンはカウントゼロの6秒前に点火され、4基合計で160万ポンド(約7100キロニュートン)の推力を生成したものの、1分7秒が経った時点で燃焼を停止し、予定されていた燃焼時間には達しませんでした。1分ほどでエンジンが停止されるに至った原因は今後早期に特定される見込みで、NASAのジム・ブライデンスタイン長官は「コアステージとエンジンの状態は良好」とツイートしています。

今回エンジン燃焼試験が実施されたコアステージは2021年11月に予定されているアルテミス計画最初のミッション「アルテミス1」の打ち上げに用いられるもので、アルテミス1はSLSや新型宇宙船「オリオン」の無人飛行試験にあたります。アルテミス1のコアステージは2020年1月にジョン・C・ステニス宇宙センターのB-2テストスタンドに据え付けられて以降、各段階の試験が順を追って進められてきました。エンジン燃焼試験の結果についてブライデンスタイン長官は「カウントダウンとエンジンの点火に成功し、計画を進める上での貴重なデータが得られました」とコメントしています

なお、SLSの開発は当初の予定よりも遅れており、2020年は新型コロナウイルス感染症への対策にともなう施設の閉鎖や悪天候の影響もあって、グリーンランのスケジュールも遅延しています。今年秋のSLS初打ち上げにどのような影響があるのか、原因の分析結果が注目されます。

上空から撮影された燃焼試験実施中のB-2テストスタンド(Credit: NASA)

 

Image Credit: NASA
Source: NASA
文/松村武宏

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