NASAは1月29日、NASA/ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された、さそり座にある惑星状星雲「ESO 455-10」の画像を今日の1枚として公開しました。惑星状星雲は、昔のあまり性能が良くなかった望遠鏡でみると、まるで惑星のようにみえるために、このようにネーミングされましたが、惑星とはなんの関係もありません。今回はこのような惑星状星雲について解りやすく解説してみたいと思います。
恒星は水素を燃料にした核融合によって輝いています。しかし、歳を取ると、核融合の燃えカスであるヘリウムが中心部にたまり、塊をつくります。
ヘリウムは、水素に比べると、非常に核融合が起こりにくいです。そのため、このように恒星の中心部にヘリウムの塊ができると、恒星の中心部での核融合が停止し、ヘリウムの塊りの外側で水素が核融合するようになります。
とはいえやはりヘリウムの塊自体では核融合は起こっていません。そのため、このヘリウムの塊は、自分自身の重力で、潰れて、ギュッと圧縮され、非常に高温・高圧になります。すると、その熱がヘリウムの塊の外側に伝わって、水素の核融合が激しさを増し、恒星全体が膨れ上がります。これが赤色巨星です。
赤色巨星では、このように恒星全体が膨れ上がるために、その周辺部分では、重力的な縛りが弱まり、大量のガスが流れ出します。これを質量放出といいます。
やがて、ヘリウムを燃料にした核融合が始まりますが、最終的には、水素やヘリウムなどの核融合の燃料が尽き、核融合が停止した、恒星のコアだけが残ります。これが白色矮星です。
白色矮星は、地球程度の大きさに、太陽程度の質量が詰め込まれた、とても高密度の天体です。非常に高温なために強烈な紫外線を放射しています。画像で言うと、惑星状星雲ESO 455-10の中心で輝いているのがこの白色矮星です。
こうして、質量放出によって放出されたガスが、白色矮星が放つ紫外線によって、電離され、輝いているのが惑星状星雲というわけです。
その後、白色矮星は、すでに核融合が停止しているために、ゆっくりと冷えて暗くなっていきます。恒星の最後ですね。
太陽の質量の1~8倍ほどの質量を持つ恒星はこのような一生をたどると考えられています。
私達の太陽も、50億年後には、赤色巨星をへて、惑星状星雲を形成しながら、白色矮星となり、その一生を終えると考えられています。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, L. Stanghellini
Source: NASA
文/飯銅重幸