日本時間2021年2月3日朝、スペースXは開発中の大型宇宙船「スターシップ」の試験機「SN9」(SNはSerial Numberの略)による2回目の高高度無人飛行試験を実施しました。打ち上げと目標高度10kmへの到達、上空から着陸地点への降下には成功したものの、今回も着陸には至らず機体を喪失しています。
▲スペースXが公開しているSN9飛行試験の配信アーカイブ(Credit: SpaceX)▲
SN9による今回の飛行は日本時間2020年12月10日に実施された試験機「SN8」による高高度飛行試験に次ぐもので、前回と同様に3基の「ラプター」エンジンや降下時の姿勢制御と誘導を担う4枚のフラップが備わっていました。
別の試験機「SN10」のすぐ隣から打ち上げられたSN9はスムーズに上昇を続け、打ち上げから4分30秒ほどが経った時点でエンジンを停止し降下を開始。水平姿勢に移った後は着陸地点に向けた誘導に成功したものの、着陸直前の垂直姿勢へ戻す際に再点火されるべきエンジン2基のうち片方が点火できず、姿勢を崩したまま着陸地点に激突しました。
前回飛行したSN8も着陸地点へ機体を誘導する段階までは成功していましたが、燃料タンクが圧力を失ったために再点火したエンジンが正常に燃焼せず、やはり着陸地点に激突しています。今回のSN9では、SN8のエンジン異常燃焼につながった圧力喪失についての対策が行われていました。スターシップの建造と試験が行われているテキサス州ボカチカで現地取材を続けているNASASpaceFlight.comは、SN9の大破にともなうSN10やタンク群への被害は無かったとしています。
なお、CEOのイーロン・マスク氏はSN9の飛行試験前日となる2月2日に「しばらくTwitterをオフにします」とツイートしており、SN9の飛行試験後も沈黙を保っています。
スペースXによると、スターシップは旅客輸送用のクルー型なら100名を、貨物輸送用のカーゴ型なら100トンのペイロード(人工衛星や貨物など)を地球低軌道に打ち上げる能力を備え、軌道上で推進剤を補給することで月や火星にも飛行可能とされています。
また、ZOZOの元社長・前澤友作氏が複数名のアーティストとともにスターシップに乗り込み、2023年に月周辺を飛行する予定であることも昨年発表されています。マスク氏はスターシップによる火星への無人飛行の打ち上げを2022年に、有人飛行の打ち上げを2024~2026年に実施したいとする目標を掲げています。
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Image Credit: SpaceX
Source: SpaceX / NASASpaceFlight.com
文/松村武宏