火星の「ジェゼロ(Jezero)・クレーター」は、米国航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」が日本時間2021年2月19日に着陸する予定の場所です。
直径約45kmのジェゼロ・クレーターは小型自動車ほどの大きさがあるPerseveranceが着陸するには十分な広さであるようにも思えますが、着陸を邪魔する崖や砂丘、岩海などの障害物がたくさん存在していて、障害物の上に降りてしまうとミッションに重大な影響が及ぶ可能性もあるといいます。NASAジェット推進研究所(以下、JPL)は、Perseveranceの着陸を成功へと導くための2つの技術を紹介しています。
ジェゼロ・クレーターは約35億年以上前には粘土鉱石が堆積した湖であったと予想されており、微生物が生息した可能性が指摘されています。Perseveranceはこうした微生物が生息した兆候を見つけ出すことを主目的としています。
現在運用中の火星探査車「Curiosity(キュリオシティ)」をベースに開発されたPerseveranceは、Curiosityと同じ降下・着陸システムを採用しています。しかし、Perseveranceに搭載されている科学機器などの重量はCuriosityから50%以上増えた上に、ジェゼロ・クレーターはCuriosityが降り立った「ゲール・クレーター」よりも着陸しにくい地形だといいます。
より困難な着陸を成功に導くために、Perseveranceには「TRN(Terrain-Relative Navigation)」と呼ばれるシステムが備わっています。TRNはLVS(Lander Vision System)とSTS(Safety Target Selection)という2つの技術から構成されています。
LVSは崖やクレーター、多くの岩が集まる岩海といった障害物が作り出す光のコントラストを測定する技術で、測定結果と火星表面の地図とを比較しながらPerseveranceが着陸するのに安全な場所を発見します。他方STSは、LVSが着陸に安全だと判定した地点がPerseveranceの着陸に適切でなかった場合、最大600mまで着陸地点を変更できる機能です。
JPLは、TRNで活用される技術が将来、ロボットや人間による火星の開発にも役立つと述べています。
Image Credit: NASA/Jet Propulsion Laboratory
Source: JPL
文/Misato Kadono