こちらは月の南極エイトケン盆地にある「ライダー・クレーター(Ryder Crater)」です。ライダー・クレーターは月の裏側にあるため、地球から直接観測することはできません。その大きさは約13×17kmで、大小2つのクレーターが隣接しているような不思議な形をしています。
アリゾナ州立大学によると、ライダー・クレーターは別のクレーターの上に形成されているといいます。この下地になったクレーターは直径が約70kmで、縁から底までの高低差は3,000m以上もあります。ライダー・クレーターを形成した天体は、この大きなクレーターを取り囲む縁の最高地点に衝突したとみられています。
急斜面に形成されたライダー・クレーターは縁の高さが方向によって異なり、最大で約1,500mもの差が生じているといいます。画像では左側よりも右側ほど標高が高くなっており、クレーターを2重に見せている崩落のような地形も、急斜面の影響を強く受けた結果かもしれません。
ライダー・クレーターはアポロ計画で採取されたサンプルの分析に貢献し、2002年に亡くなった研究者のGraham Ryder(グラハム・ライダー)氏にちなんで命名され、2006年8月の国際天文学連合(IAU)の総会において正式に承認されました。
冒頭の画像はアメリカ航空宇宙局(NASA)の月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」の光学観測装置「LROC」による観測データをもとに作成されたもので、2020年10月19日付で公開されています。
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Image Credit: NASA/GSFC/Arizona State University
Source: ASU
文/松村武宏