こちらは「かみのけ座」の方向およそ2億7000万光年先にある棒渦巻銀河「NGC 4907」を捉えた画像です。NGC 4907は1000個ほどの銀河が集まった「かみのけ座銀河団」の一員で、欧州宇宙機関(ESA)によると同銀河団を構成する別の銀河もNGC 4907の周辺に幾つか写っているといいます。
NGC 4907は地球に対して正面を向けている「フェイスオン銀河」のひとつで、中央部分の星々が集まった明るいバルジから上下に伸びる棒状構造や、そこから伸びる渦巻腕の様子などがよく見えています。棒渦巻銀河は渦巻銀河全体の約3分の2を占めるとされていて、私たちが住む天の川銀河も中央部分に棒状構造を持つことが知られています。
いっぽう、数多くの銀河が写っている画像の中央付近で明るく輝いているのは、天の川銀河に属する恒星のひとつです。地球からこの星までの距離はおよそ2500光年とされており、画像では隣り合っているように見えるNGC 4907は、この星と比べて10万倍以上も離れていることになります。宇宙の広さや銀河の大きさを改めて感じさせる一枚です。
画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による光学観測データをもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2020年8月3日付で公開されています。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gregg
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏