アメリカ航空宇宙局(NASA)・ジェット推進研究所(JPL)のMark Swain氏らの研究グループは、現在観測されている太陽系外惑星「GJ 1132 b」の大気が火山活動によって再形成されたものである可能性を示した研究成果を発表しました。
GJ 1132 bは南天の「ほ座」(帆座)の方向およそ41光年先にある恒星「GJ 1132」を周回しています。地球と比べて直径は約1.16倍、質量は約1.66倍で、地球のような岩石惑星とされています。主星のGJ 1132は太陽よりも軽くて低温の赤色矮星ですが、GJ 1132 bは約1.63日で1周するほど主星に近い軌道を描いていることから日射量は地球の19倍に達し、地表の温度は摂氏約256度と推定されています。主星の近くを公転しているため、GJ 1132 bは潮汐作用によって自転と公転の周期が同期した潮汐固定(潮汐ロック)の状態にあるとみられています。
研究グループによると、もともとGJ 1132 bのサイズは地球よりも数倍大きく、水素やヘリウムでできた大気を持つ海王星に似た惑星として形成されたものの、誕生して間もない主星の強い放射によって大気が剥ぎ取られて岩石質のコア(核)だけが残ったと考えられています。そのため当初は現在のGJ 1132 bに大気は存在しないと思われていたものの、「ハッブル」宇宙望遠鏡による過去の観測において大気の存在が検出されていました。
今回研究グループがハッブル宇宙望遠鏡を利用してGJ 1132 bを新たに観測したところ、GJ 1132 bの大気は水素、シアン化水素、メタン、アンモニアが豊富で、光化学反応により生成されたとみられる炭化水素のもやが存在することも判明したといいます。また、今回の研究では地表の大気圧が地球と同程度である可能性も示唆されています。
■火山活動で放出された気体によって大気が再形成されたか研究グループは現在観測されているGJ 1132 bの大気について、一度失われた後に火山活動によって再形成されたもの(二次大気)だと考えています。今回検出された水素は失われる前の大気からマグマオーシャンを介してGJ 1132 bの内部に取り込まれていたもので、大気から宇宙空間へと流出してしまう一方、火山活動によって現在も大気中に補充され続けているとみられています。発表によると、系外惑星の大気が火山活動によって再形成されている証拠が見つかったのは今回が初めてのこととされています。
研究グループは、潮汐作用による内部の加熱(潮汐加熱)がGJ 1132 bにおける火山活動のエネルギー源になっている可能性を指摘しています。これは木星の衛星イオにみられる火山活動と同様の仕組みです。研究グループではGJ 1132 bの地殻の厚さが数百フィート程度(1フィート=0.3048メートル)と薄く、潮汐作用を受けてひび割れた地表から水素などの気体が噴出しているのではないかと考えています。
また、GJ 1132 bの地表における大気圧が仮に地球と同程度であれば、2021年10月に打ち上げ予定の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」によって地表から放射された赤外線を検出できるかもしれないといいます。研究を率いたSwain氏は、GJ 1132 bにおける地質活動の兆候を観測できる可能性に期待を寄せています。
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Image Credit: NASA, ESA, and R. Hurt (IPAC/Caltech)
Source: ESA/Hubble / NASA/JPL
文/松村武宏