コロラド大学ボルダー後のSpencer Hurt氏らの研究グループは、一般にもよく知られた一等星「ベガ」に太陽系外惑星が存在する可能性を示した研究成果を発表しました。
地球から約25光年先にあるベガは「こと座」の一角を成す青白いA型星で、七夕の「織姫」としておなじみの星です。七夕の「彦星」である「わし座」のアルタイルや「はくちょう座」のデネブとともに「夏の大三角」を成す星でもあります。太陽と比べてベガの質量は約2.2倍、直径は約2.4~2.7倍(赤道付近がふくらんだ形)で、表面の平均温度は摂氏約9400度とされています。
■約2日半で公転する系外惑星が存在するかもしれない研究グループが地上からの10年間に渡るベガの観測データを分析したところ、約16時間で1回自転するベガ表面の特徴に由来するとみられる信号のほかに、ベガのかすかなふらつきを示唆する約2.43日周期の信号が検出されたといいます。このふらつきは、ベガが約2.43日周期で公転する系外惑星によってわずかに揺さぶられることで生じている可能性があります。
仮にこの信号が系外惑星に由来するものであれば、惑星の質量は最低でも地球の約20倍(木星の約0.06倍)で、惑星の軌道の傾き(地球から観測されるベガのふらつき具合に影響する)によってはそのおよそ10倍(木星の約0.6倍)の可能性もあるといいます。また、この惑星は太陽から水星までの距離よりもベガに近い軌道を周回しているとみられることから、表面の平衡温度は小さな恒星ほどもある摂氏約3000度と推定されています。研究グループによるとこの温度は、既知の系外惑星としては「KELT-9b」に次ぐ高温とされています。
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今回の研究で示されたのはあくまでも系外惑星の「候補」であり、ベガを公転する系外惑星の「発見」には至っていません。研究グループは、延長ミッションに入ったアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS」による観測や、2021年10月に打ち上げられる宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」および2020年代の打ち上げが予定されている宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン」といった将来の宇宙望遠鏡に期待を寄せています。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: CfA
文/松村武宏