インターステラテクノロジズ株式会社(以下IST)と株式会社TENGAは2021年1月26日、両社の共同プロジェクトとして2021年夏頃に「TENGAロケット」の打ち上げを目指すことを発表しました。
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一般の人間にとってはまだまだ遠い「宇宙」を身近な存在にするべく宇宙開発を目指すベンチャーと、時にタブー視もされる「性」に関連したブランドを展開する企業とのコラボレーション。人によって受け取り方や意見がさまざまであることは想像に難くありませんし、思春期の子どもを育てる筆者としてもいろいろなことを考えるきっかけになった今回のミッションは、ISTとTENGAの双方にとって大きな意味を持つ取り組みのようです。
■国内初、民間ロケットからのペイロード放出&回収を目指すISTTENGAロケットはISTの観測ロケット(サウンディングロケット)「MOMO」の6号機にあたります。観測ロケットであるMOMOは地球を周回する軌道には投入されず、宇宙空間への到達後に降下して洋上に着水する弾道飛行を行います。ちなみにMOMOの名は高度100km(※)の「100」を表す漢字「百」の読み方のひとつ「もも」に由来しています。
※…国際的な定義では高度100km以上(米空軍では高度80km以上)が宇宙空間とされる
MOMOの打ち上げはこれまでに6回試みられていて、このうち2019年5月に打ち上げられた「宇宙品質にシフト MOMO3号機」は高度約113kmの宇宙空間へと到達しました。これは日本国内の民間企業が単独で開発したロケットとしては初めてのこととなります。
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ただ、3号機の成功以降、MOMOは宇宙空間への到達に至っていません。2019年7月の「ペイターズドリーム MOMO4号機」と2020年6月の「えんとつ町のプペル MOMO5号機」は打ち上げ後のトラブルにより飛行を中断。2020年7月の「ねじのロケット」(MOMO7号機)は、エンジン内部にある点火器の不具合により打ち上げが中止・延期されています。
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ISTは実際の打ち上げで得られたデータをもとにMOMOの信頼性向上に取り組んでいて、従来の「MOMO v0」からバージョンアップした「MOMO v1」の開発が進められています。ISTによると、v1ではエンジンシステム全体の改善やノズルの材質変更、アビオニクス(航空電子機器)の構成変更、地上側設備の高信頼化などが図られています。こうしたMOMO v1の開発内容はTENGAロケットにも織り込まれる予定とされています。
また、TENGAロケットには後述するようにペイロードとしてデータ計測用のTENGAが搭載されるほかに、宇宙空間で放出されたTENGA公式キャラクター「TENGAロボ」の洋上回収が試みられることも発表されています。成功すれば、TENGAロケットは国内の民間企業が開発したものとしては初めて、宇宙空間へのペイロード放出と洋上での回収を行ったロケットとなります。
なお、ISTでは高度500kmの地球低軌道に重量100kg以内の超小型人工衛星を投入可能なロケット「ZERO」の開発を進めていて、MOMO v1ではZEROの実用化を見据えた技術実証も行われます。人工衛星の軌道投入には欠かせないペイロードの放出も含め、新バージョンのMOMOを用いるTENGAロケットはISTの「宇宙空間到達」からのステップアップを象徴するミッションと言えそうです。
■夢はNASAでの採用、宇宙用デバイスの開発を目指すTENGAいっぽう、TENGAは「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というビジョンのもと、グローバル市場で男性・女性向けのセクシャルウェルネスブランドやセルフケアアイテムブランドを展開しています。
現在は民間企業による宇宙旅行の開始が目前に迫っている段階ですが、今後人類の活動領域が地球低軌道から月やその周辺、さらにその向こうへと広がっていくにつれて、宇宙は限られたプロフェッショナルが活躍する場から、より多くの人々が携わる仕事や観光の場へと変化していくはずです。いずれは宇宙での「性」について考えなければならない時が訪れるのは確実であり、TENGAでは将来に向けて宇宙用のデバイス開発を目指しているといいます。
発表によると、今回のコラボレーションはISTファウンダーの堀江貴文氏とTENGA代表の松本光一氏がテレビ番組で共演したことがきっかけとされています。松本氏はTENGAが宇宙で使われることやNASAに採用されることを創業以来夢見てきたとコメント。TENGAロケットではその第一歩として宇宙空間でのデータを得るために計測用のTENGAが搭載されるほかに、前述のように国内民間初のペイロード放出と回収を目指すTENGAロボ、そして後述するクラウドファンディングで募った「愛と自由の寄せ書き」を収めた容器の放出が予定されています。
TENGAによると、同社は宇宙におけるセクシャルアイテムの技術的な問題についても検討。男性向けデバイスの例として、尿を飲用水にリサイクルする水再生システムへの混入を防ぎ、また微小重力環境での浮遊を防ぐために、宇宙ステーションのトイレで便を吸引するのと同様のバキューム機構を採用することも想定されています。
世界保健機関(WHO)が2002年に策定した「性の健康と性の権利に関する仮定義」を受けて性の健康世界学会(WAS)が2005年に採択した「モントリオール宣言」によると、性の健康(sexual health)とは疾病がない状態に留まらず、性の喜びや満足も幸福(well-being)にとって不可欠な要素であるとされています。また、調査会社の米グランドビューリサーチ社によると、自由化やソーシャルメディアの普及、大衆文化の影響を受けた性の健康の重要性に対する意識の高まりを背景に、TENGAの主力製品であるセクシャルアイテムの世界市場規模は2020年の336億ドルから2028年には524億ドルに拡大すると予想されています。同社にとってTENGAロケットのミッションは、今よりも身近になった将来の宇宙における性の健康への貢献とともに、地上とは異なる環境で用いられるセクシャルアイテムの開発と市場シェア獲得に向けた取り組みにつながるものとなりそうです。
■ミッションに参加できるクラウドファンディングも実施なお、TENGAは2021年4月21日まで「TENGAロケットを一緒に宇宙へ飛ばそう!『TENGA宇宙隊員募集』!」と題したクラウドファンディングを「BOOSTER」にて実施しています。支援額は3500円~50万円で、リターンはTENGAロケットで打ち上げ・放出されるメッセージ「愛と自由の寄せ書き」への記入権やオリジナルグッズなど。最高額50万円の支援者にはTENGAロケットのレプリカも贈られます。
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「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というISTのビジョンを象徴するミッションのひとつと言えるTENGAロケット。夏の打ち上げに向けた今後の経過にも注目していきたいと思います。
TENGAロケット 関連サイト情報
TENGAロケット公式サイト:https://rocket.tenga.co.jp/
クラウドファンディングサイト:https://camp-fire.jp/projects/view/242583
Source: インターステラテクノロジズ / TENGA / 日本性教育協会 / グランドビューリサーチ
文/松村武宏