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木星の成層圏で吹くジェット気流、アルマ望遠鏡の観測により発見される

sorae.jp 2021年3月20日 21時0分

今回観測された木星極域の成層圏で吹くジェット気流を示した図。水色の線がジェットの風速を示している。木星の画像は木星探査機「ジュノー」が撮影したもの(Credit: ESO/L. Calçada & NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS)

ボルドー天体物理学研究所のThibault Cavalié(ティボー・キャバリエ)氏らの研究グループは、木星の成層圏を吹くジェット気流の速度を初めて測定することに成功したとする研究成果を発表しました。研究グループによると、木星極域の成層圏では高速の風が地球の4倍もの直径を持つ渦を形作っているとみられています。

■木星のオーロラの下では時速1450kmのジェット気流が渦巻いている可能性

木星で吹く風を調べるために、研究者はこれまで雲やオーロラを利用してきました。発表によると、白や茶色に彩られた印象的な縞模様に存在する雲の動きからは低層の風を調べることが可能で、極域に現れるオーロラは上層の風と関連があるとみられているといいます。そのいっぽうで、低層と上層の間にあたる中層の成層圏では雲が発生しないため、成層圏での風を調べることはこれまで難しかったといいます。

今回Cavalié氏らはチリの「アルマ望遠鏡」を使い、木星の大気圏に存在するシアン化水素(HCN)が放つ電波を観測しました。研究グループによると、このシアン化水素は1994年に木星へ衝突した「シューメーカー・レビー第9彗星」によって木星にもたらされた分子のひとつで、衝突以来木星の成層圏を風に乗って移動し続けているといいます。

観測の結果、研究グループは地球のジェット気流のように幅が狭く帯状に伸びる風の速度を測定することに成功。Cavalié氏によると、木星の極域、オーロラの下で吹いているジェット気流の速度は時速1450km(秒速400m)で、これは大赤斑の最大風速の2倍以上、地球で最も強い竜巻の風速の3倍以上に相当するものだといいます。また、赤道域の成層圏でも時速600kmの強い風が吹いていることも判明したとされています。

研究に参加した同研究所のBilal Benmahi(ビラル・ベンマヒ)氏によると、木星の極域で吹くジェット気流が地球の4倍の直径を持ち、900kmほどの高さに達する巨大な渦を形作っていることを今回の結果は示しているといいます。観測されたジェット気流についてCavalié氏は「太陽系でもユニークな気象怪物(meteorological beast)」と表現しています。

発表によると、木星の極域では今回の研究で対象となった領域よりも数百km上空の上層に強い風が吹いていることはすでに知られていたものの、高度が下がるにつれて速度は低下し、成層圏では消えていると考えられてきたといいます。アルマ望遠鏡による今回の観測は従来の予想を覆すもので、研究者を驚かせる結果となりました。今回の成果についてCavalié氏は「木星の極域の研究に新たな扉を開いたと言えます」とコメントしています。

 

関連:探査機ジュノーから眺めた迫力の木星映像、本物の観測データをもとに作成

Image Credit: ESO/L. Calçada & NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
Source: 国立天文台
文/松村武宏

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