こちらは新型宇宙船「オリオン」のメインエンジン取り付け作業の様子です。アメリカ航空宇宙局(NASA)が月面探査計画「アルテミス」に向けて開発を進めているオリオン宇宙船のうち、飛行に必要なエンジンや太陽電池パドルを備えたサービスモジュール(ESM:European Service Module)は欧州宇宙機関(ESA)が製造を担当しており、この写真はドイツにあるエアバスの施設で撮影されました。
オリオン宇宙船のサービスモジュールには姿勢制御用の小さなものも合わせて全部で33基のエンジンが搭載されています。このうち地球と月周辺の往復に用いられるメインエンジンには、2011年に退役したNASAのスペースシャトルに搭載されていた軌道制御システム(OMS:Orbital Maneuvering System)のエンジンを改修したものが採用されています。
ESAによると、オリオン宇宙船最初の5機ではかつてスペースシャトルに搭載されていたOMSエンジンそのものが再利用されます。冒頭の写真はアルテミス計画の有人飛行試験にあたる「アルテミス2」ミッションで飛行するオリオン宇宙船のサービスモジュール「ESM-2」における作業の様子ですが、ESM-2のメインエンジンはスペースシャトル「アトランティス」に搭載されていたOMSエンジンを再利用したものとされています。
アルテミス計画ではおよそ半世紀ぶりとなる有人探査ミッション「アルテミス3」が2024年に実施される予定です。このミッションはアルテミス計画における3番目のミッションで、これに先立ちオリオン宇宙船や打ち上げに使われる新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」の無人飛行試験にあたる「アルテミス1」が2021年後半に、有人飛行試験のアルテミス2は2023年に実施されることになっています。
オリオン宇宙船やSLSの開発は当初の計画から遅れていますが、先日はNASAのジョン・C・ステニス宇宙センターにおいてアルテミス1の打ち上げに使われるSLSのコアステージがエンジンの地上燃焼試験に成功し、今年後半に予定されている初飛行に向けて大きく前進しています。
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Image Credit: Airbus
Source: ESA
文/松村武宏