マラード宇宙科学研究所(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)のWilliam Dunn氏らの研究グループは、アメリカ航空宇宙局(NASA)のX線観測衛星「チャンドラ」による観測の結果、天王星から放射されたX線が初めて検出されたとする研究成果を発表しました。
■太陽X線の散乱だけでなく環やオーロラからもX線が放射されている可能性宇宙から届くX線というと、周囲の物質を盛んに取り込む活動的なブラックホールや超新星爆発といった激しい天体や現象が思い浮かびますが、より身近な天体である太陽、惑星、衛星、彗星もX線を放出しています。このうち惑星から放射されたX線については、これまでに水星、金星、地球、火星、木星、土星で検出されています。
研究に参加したAffelia Wibisono氏(ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校)によると、惑星がX線を放射する仕組みには「太陽X線の散乱」「蛍光(太陽から飛来したエネルギー粒子が惑星表面の岩などに衝突してX線で光らせる)」「オーロラ」の3通りがあるといいます。
研究グループがチャンドラによる2002年と2017年の天王星の観測データを分析したところ、天王星からX線が放射されていることが初めて明らかになりました。その主な仕組みは太陽X線の散乱と考えられていますが、分析結果は散乱のみで説明されるよりも多くのX線が生成されていることを示しているといいます。
研究グループは、土星の環と同じように天王星の環が蛍光X線を放射しているか、あるいは地球や木星のようにオーロラがX線を放射しているのではないかと考えており、チャンドラなどによるさらなる観測の必要性を指摘しています。
また、天王星は横倒しになって自転していますが(自転軸の傾きは約98度)、北と南の磁極を結んだ磁軸は自転軸に対して約60度も傾いているだけでなく、天王星の中心からもずれていることが知られています。
関連:自転する太陽系8惑星を比較した動画が面白い!横倒しや逆回転も
発表では、傾いた磁場によってオーロラが複雑に変動する可能性がある天王星は興味深いX線観測の対象であり、成長するブラックホールや中性子星といった天体がX線を放射する仕組みをより良く理解することにつながると期待されています。
関連:天王星の大気が一部失われていたらしき証拠、ボイジャーのデータから発掘
Image Credit: X-ray: NASA/CXO/University College London/W. Dunn et al; Optical: W.M. Keck Observatory)
Source: チャンドラX線センター
文/松村武宏