アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は現地時間4月10日、史上初めて火星での動力飛行に挑む火星ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」の初飛行が4月14日以降に延期されたことを明らかにしました。
当初、Ingenuityによる初飛行は現地時間4月11日遅くに予定されていました。4月8日にはローターを低速回転させる試験(毎分50回転)が行われていましたが、その翌日の4月9日に実施されたローターの高速回転試験において、コンピューターのモードを「飛行前」から「飛行」へと切り替えようとした際にコマンドシーケンスが早期終了する問題が生じたとのこと。Ingenuityの状態は良好とされています。
JPLによると、Ingenuityに揚力をもたらす幅1.2mのカーボンファイバー製ローター(二重反転式)は、約12秒かけて飛行に適した毎分2537回転まで回転速度を上げていきます。揚力が生み出されるようにローターのピッチ角を変えて離陸したIngenuityは、初飛行では約6秒で目標の高度3mに到達し、高度と位置を保ちながら約30秒間ホバリングを続ける計画です。
Ingenuityが飛行する様子は火星探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」のマストに取り付けられているズーム対応カメラ「Mastcam-Z」などによって静止画や動画で撮影される他に、Ingenuityに搭載されているカメラによる上空からの撮影も実施される予定です。
JPLディレクターのMichael Watkins氏は、1903年12月にライト兄弟が成し遂げた人類初の航空機による動力飛行について「目撃したのはほんの一握りの人々でしたが、その瞬間は見事な写真に収められました」と言及した上で、「別の天体における制御された動力飛行への初挑戦、その結果を分かち合う素晴らしい機会を、私たちは火星の『ロボット写真家』を介して提供します」とコメントしています。
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Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL (1) / NASA/JPL (2)
文/松村武宏