ヨーロッパ宇宙機関(ESA)は4月7日、ESAの位置天文衛星ガイアのデータを使って、ガイア重力レンズワーキンググループが、重力レンズ効果によって4つに分裂してみえるクエーサー、いわゆる「アインシュタインの十字架(Einstein Cross)」を一度に12個も発見したと発表しました。
ほとんどの銀河の中心には超大質量のブラックホールがひそんでいますが、この超大質量ブラックホールが、周りのガスや塵を渦を巻いて吸い込むと、ガスや塵同士の摩擦によって、莫大な熱が発生し、ガスや塵がプラズマ化して、X線から可視光線、電波にいたるまで、さまざまな光(電磁波)で強烈に光り輝きます。これがクエーサー(活動銀河核)です。
クエーサーは宇宙でもっとも明るい天体の1つといわれています。
ところで、このようなクエーサーと私達の地球の間に銀河や銀河団などの重い天体があると、1つのクエーサーがいくつにも分裂してみえることがあります。アインシュタインの一般相対性理論によれば、重い天体の周りでは、時空が曲がるために、あたかも凸レンズがあるかのような効果が生じて、背後にあるクエーサーからの光(電磁波)が複数の経路に別れて、地球に届くためです。これを重力レンズ効果といいます。
そのうち、1つのクエーサーが4つに分裂してみえるものが、アインシュタインの十字架です。アインシュタインの十字架は、非常に珍しく、1985年に初めて発見されて以来、これまでに50個ほどしかみつかっていません。
研究チームは、まず、ESAの優れた空間解像力を誇る位置天文衛星ガイアの2回目に公開されたデータを特化したAIを使って解析し、アインシュタインの十字架の候補を絞り込みました。そして、その後、NASAの広視野赤外線探査衛星(WISE)のデータを使ってさらに有力な候補を絞り込み、最終的に、アメリカ、ハワイ州にあるケックI望遠鏡などの地上の望遠鏡を使ってフォローアップ観測をおこない、新たに12個ものアインシュタインの十字架を発見しました。
研究チームでは、アインシュタインの十字架のように分裂してみえるクエーサーは、宇宙の誇張率に関するハッブル定数の決定やダークマターの研究などにユニークな研究手段を提供できますが、位置天文衛星ガイアのデータが最終的に公開されれば、このように分裂してみえるクエーサーが数百単位でみつかるのではないかと期待しています。
Image Credit:R. Hurt (IPAC/Caltech)/The GraL Collaboration/The GraL Collaboration
Source:ESA/論文
文/飯銅重幸