国立天文台/総合研究大学院大学の竹村英晃氏らの研究グループは、星の形成に関する新たな過程を示した研究成果を発表しました。研究グループによると、星の赤ちゃんである原始星の形成過程は、従来の予想とは大きく異なることが明らかになったといいます。
宇宙には主に水素分子でできた分子雲という冷たいガスの集まりがあり、そのなかでも特にガスの密度が高い領域は分子雲コアと呼ばれています。分子雲コアは星の卵と言えるもので、ここから原始星が誕生すると考えられています。
発表によると、星は様々な質量を持って誕生するものの、星の質量関数(質量ごとの数の分布)は天の川銀河のどこでもほぼ同じだといいます。そのいっぽうで、分子雲コアの質量関数も星の質量関数と同じような傾向にあることから、分子雲コアの質量は誕生する星の質量にそのまま結びつくと考えられてきたといいます。
研究グループは今回、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡およびアメリカのミリ波干渉計「CARMA」によるオリオン座の散光星雲「オリオン大星雲(M42)」の観測データをもとに、従来の星形成モデルを検証しました。オリオン大星雲は「星のゆりかご」とも表現される星形成領域の代表例であり、電波で観測することで冷たいガスの分布を直接調べることができるといいます。
オリオン大星雲の広範囲に渡るほぼ完全な分子雲コアの観測データを研究グループが分析した結果、原始星は分子雲コアからそのまま誕生するのではなく、より多くのガスを集めてから誕生していることが判明したといいます。この結果は、星の形成が分子雲コアの内部で完結しているとした従来の予想とは大きく異なり、新たな星の形成過程を描き出すものとなりました。
研究グループは、従来の研究で示された星の形成に関するモデルは限られた領域かつ限られた分子雲コアの観測から導かれたものであり、天の川銀河の普遍的な星形成過程を理解するには、より広い領域を対象とした観測が必要だったと指摘します。今後はオリオン大星雲以外の星形成領域を対象に観測を行い、今回の研究で示された星形成過程が他の場所でも成立するのかが調べられる予定です。
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Image Credit: Takemura et al.
Source: 国立天文台
文/松村武宏