理化学研究所、京都大学、東京大学などは4月22日、これまで謎とされてきた超新星爆発が発生するメカニズムに関して、ニュートリノ加熱説を裏付ける有力な観測的な証拠が得られたと発表しました。研究チームは、2000年から2018年までの約18年間に及ぶNASAのチャンドラX線観測衛星による超新星残骸「カシオペヤ座A」の観測データを詳しく分析することで、その証拠をつかみました。
■ニュートリノ加熱説とは?恒星の中心部では、核融合反応が起こっていて、膨れ上がろうとする力が働いています。ところが、歳を取ると核融合の燃料が尽き始め、核融合反応の勢いが弱まるために、恒星は、自分自身の重力に負けて潰れ始めます。
ところで、この頃になると恒星の中心部には、核融合反応の燃えカスである鉄が溜まって塊をつくっています。そして、この鉄の塊がいったん恒星が潰れるのを支えます。
ところが、恒星が潰れ続けると、恒星の内部がギュッと圧縮され、高温・高圧になるために、ついに耐え切れなくなってこの鉄の塊も潰れ始めます。いわゆる重力崩壊の始まりです。
そして、この重力崩壊の過程で、大量の中性子が発生し、恒星の中心部に中性子の塊をつくります。この中性子の塊はとても丈夫でなかなか潰れません。そのため、物凄い勢いで潰れてきた恒星全体を勢いよく弾き返します。これが超新星爆発です。太陽の質量の約10倍以上の質量を持つ大質量星はこのような最期を迎えると考えられています。
ただ、これまでのシミュレーションによる研究から、ただ単に弾き返されるだけでは、衝撃波が、途中で冷えて、弱まってしまうために超新星爆発は不発に終わってしまうことが解っています。
そこで、衝撃波を、加熱し、復活させる何らかのメカニズムが必要だと考えられています。その有力な答えの1つが、超新星爆発の際に大量に発生するニュートリノ(素粒子の1種)による加熱です。
■チャンドラX線観測衛星の観測データからニュートリノ加熱説の有力な観測的証拠をつかむ!ニュートリノ加熱説によれば、ニュートリノによる加熱によって発生する対流や上昇流によって、ニュートリノによる加熱が効率化され、超新星爆発に至ると考えられていますが、このような対流や上昇流が発生しているところでは、爆発時に、チタン、クロム、鉄などの特定の元素が効率的につくられます。
そこで、研究チームが、2000年から2018年までの約18年間に及ぶNASAのチャンドラX線観測衛星による超新星残骸「カシオペア座A」の観測データを詳しく分析したところ、カシオペア座Aの東南部で上昇流が存在するところで理論的に予測される元素量とよく一致する量のチタン、クロム、鉄などが存在することが確認されました。
研究チームでは、今回の研究成果によって、超新星爆発におけるニュートリノ加熱の存在が観測的に立証されたとしています。
なお、チャンドラX線観測衛星のようなX線天文衛星の開発は日本でも進んでいます。JAXAが開発を進めているX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」です。XRISMは、2022年度に打ち上げ予定で、X線による観測を通じて、ブラックホールや銀河団などの宇宙の大規模構造の謎の解明に挑みます。
※理化学研究所の発表ではカシオペア座と表記されておりますが、soraeでは既存の表記「カシオペヤ座」とさせていただきました。
Image Credit:理化学研究所
Source:理化学研究所のブレスリリース
文/飯銅重幸