フランスの天体物理学・惑星学研究所は4月28日、サイモン・デュプケさん率いる研究チームが、私達の天の川銀河に存在する反物質星(anti-stars)の数を推定することに成功したと発表しました。研究チームによれば、天の川銀河において、30万個の普通の恒星に対して、最大で、1個の反物質星が存在すると推定されるといいます。
■そもそも反物質ってなに?反物質とは、反陽子、反中性子、反電子などによって、つくられた物質です。反陽子、反中性子、反電子は、普通の陽子、中性子、電子に対して、電荷は反対ですが、質量などのその他の性質はほぼ同じです。例えば、電子はマイナスの電荷を帯びていますが、反電子はプラスの電荷を帯びています。しかし、その他の性質はほぼ同じです。
ビックバンによって宇宙がつくられたとき、物質と反物質は同じ数だけ存在していました。ところが、物質と反物資との間にわずかな性質の違いがあったために、対消滅によって、物質だけが残ったといわれています。
ところが、最近になって、ISS(国際宇宙ステーション)に搭載されているアルファ磁気スペクトロメータによって反ヘリウム原子核が検出された可能性が報告されました。
もしかしたら、この宇宙には反物質星などの思わぬ形で反物質が残っているのかもしれません。
■どうやって反物質星の候補を絞り込んだの?そこで、研究チームは、天の川銀河において、最大でどのくらいの反物質星が存在しうるのか調べてみることにしました。
反物質星に普通の物質が落下すると、対消滅して特徴的なガンマ線が発生します。
ガンマ線を放射する天体には、他にもパルサーやブラックホールなどさまざまな天体がありますが、それぞれ放射するガンマ線に特徴があります。
そこで、研究チームは、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡の10年間に及ぶガンマ線の観測データを詳しく分析して、天の川銀河における14個の反物質星の候補を絞り込みました。これらの候補から放射されているガンマ線の特徴は、他の既知の天体から放射されるガンマ線の特徴と一致せず、物質と反物質の対消滅の際に発生するガンマ線の特徴と一致していました。
これをもとに、研究チームが推定したところ、天の川銀河において、30万個の普通の恒星に対して、最大で、1個の反物質星が存在すると推定されることが解りました。また、私達の太陽系から数百光年以内においては、100万個の普通の恒星に対して、最大で、2.5個の反物質星が存在すると推定されることが解りました。
もしかしたら、私達の太陽系の意外とすぐ近くにも反物質星がひそんでいるかもしれませんね。
Image Credit:S. Dupourqué/IRAP
Source:天体物理学・惑星学研究所のプレスリリース/論文
文/飯銅重幸