SETI研究所およびアメリカ航空宇宙局(NASA)エイムズ研究センターのPeter Jenniskens氏らの研究グループは、2018年にボツワナへ落下し、後に隕石として破片が回収された小惑星「2018 LA」について、火星と木星の間にある小惑星帯で3番目に大きな天体である小惑星「ベスタ」が母天体(元になった天体)の可能性が高いとする研究成果を発表しました。
■およそ2280万年前にベスタから放出された可能性2018 LAはアリゾナ大学の観測プロジェクト「カタリナ・スカイサーベイ」によって2018年6月2日に発見された、幅約1.56m、質量約5.7トンと推定される小惑星で、発見からわずか8時間後に地球の大気圏へ突入しました。
隕石の落下地点を予測したJenniskens氏らは地元当局による協力の下、ボツワナの中心部にある中央カラハリ野生動物保護区において5日間に渡る捜索活動を実施。最終日の2018年6月23日にキャンプ地から30mしか離れていない場所で、サイズ約3cm、重さ18グラムの隕石が見つかりました。地元の水場にちなみ、この隕石は「Motopi Pan(モトッピ・パン)」と名付けられています。
カタリナ・スカイサーベイのディレクターを務めるEric Christensen氏は、2018 LAのように小さな小惑星は危険ではないとした上で「接近する小惑星を見つける技術を磨いてくれます」と語ります。その後に実施された再捜索の結果、2018年10月に22個、2020年11月に1個の隕石が新たに見つかりました。
隕石が見つかったことで、2018 LAは「地球へ衝突する前に発見され、後に破片が回収された」史上2番目の小惑星となりました。なお、衝突前に発見されて後に破片が回収された初の小惑星は2008年10月にスーダンへ落下した「2008 TC3」ですが、Jenniskens氏はこの時もハルツーム大学の研究者や学生らとともに破片の捜索と回収を行っています。
研究グループによると、ヘルシンキ大学における非破壊分析の結果、回収された隕石は「HED隕石」(※)に分類されることが判明。チューリッヒ工科大学での希ガス同位体測定とパデュー大学での放射性同位体測定の結果から、2018 LAが2280万年前(±380万年)に母天体から放出された可能性が示されています。さらに、軌道を解析したところ、2018 LAはベスタが位置するのと同じ小惑星帯の内側部分からやってきた可能性が示されたといいます。
地球に落下するHED隕石はベスタに由来するとみられていることから、研究グループでは、2018 LAもベスタを母天体とする小惑星である可能性が高いと考えています。またJenniskens氏は、数十億年前にベスタで発生したとみられる巨大衝突がいつ起きたのか、回収された隕石はその時期を知る上での手がかりを与えてくれるとコメントしています。
※…HEDは「ホワルダイト」「ユークライト」「ダイオジェナイト」という3種類のエコンドライト(石質隕石の一種)の頭文字から。母天体で溶融し、分化した後に固化したケイ酸塩成分が主体の隕石で、金属鉄の成分は少ない。
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Image Credit: SETI Institute
Source: SETI研究所 / ウェスタンオンタリオ大学
文/松村武宏