複数の恒星が重心の周りを軌道運動している「連星」。宇宙には無数の連星が存在し、過去には、3つ以上の恒星が軌道運動している天体も確認されています。今回は、奇妙で不思議なダンスを踊っているかのような連星「さそり座AR星」を見ていきましょう。
地球から約380光年先に位置している「さそり座AR星」は、今までは1つの変光星(明るさが変わる天体)として認識されていました。近年、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)の観測データにより、2つの恒星による連星系であることが判明しています。
主星は地球サイズの白色矮星、伴星は太陽の1/3程度の赤色矮星です。地球の大きさとあまり変わらない主星は、太陽とほぼ同じくらいの質量をもっている伴星より小さく重たい星です。
「さそり座AR星」の注目すべき特徴は、通常の連星と異なる特徴的な動きをしていることです。それは、主星の白色矮星が猛烈な勢いで自転しながら、光に近い速度まで加速された高エネルギーを伴星にぶつけているというもの。その周期は1.97分ごとに「さそり座AR星」が変光する原因であると考えられています。
ESOが作成した再現動画では、白色矮星から放出された”灯台の様な光”が、周期的に赤色矮星にぶつかり、明暗を繰り返していることがわかります。連星系の軌道運動は「ダンス」と例えられることが多いのですが、「さそり座AR星」の場合はミラーボールの光を浴びているようなイメージですね。
Image Credit: ESO/L. Calcada/University of Warwick
Source: ESO