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宇宙の膨張率「ハッブル定数」は時代と共に変化?物理法則の見直しが迫られる可能性も

sorae.jp 2021年5月19日 17時0分

【▲ 今回の研究を示したイメージ。異なる時代に起きたIa型超新星の観測データをもとに、ハッブル定数の値が一定の傾向で変化している可能性が示された(Credit: 国立天文台)】

国立天文台のMaria Dainotti氏らの研究グループは、宇宙の膨張の歴史をより詳細に描き出すこで、宇宙の膨張率を示す「ハッブル定数」が時代とともに変化している可能性を示した研究成果を発表しました。国立天文台は今回の成果を受けて、宇宙を支配する物理法則の見直しが必要になる可能性があると言及しています。

およそ138億年前のビッグバンによって誕生したとされるこの宇宙は、現在まで膨張を続けているとみられています。その膨張率を示すハッブル定数は、宇宙の物理法則を論ずる上で重要な数値の一つとなっています。

ハッブル定数を求める方法は幾つか提唱されていますが、主に「Ia型超新星(本来の明るさがほぼ一定)やケフェイド変光星(本来の明るさは変光周期が長いものほど明るい)といった本来の明るさがわかる天体までの距離を利用する方法」と「初期宇宙に由来する宇宙マイクロ波背景放射(CMB)のゆらぎを利用する方法」の2通りがあります。ところが、前者と後者の方法でそれぞれ求められたハッブル定数には、9パーセントほどの違いがあることが知られていました。

研究グループは今回、ハッブル定数の算出にも用いられている超新星の一種「Ia型超新星」の観測データがまとめられたカタログを活用。1000個以上のIa型超新星を地球からの距離に応じて幾つかの範囲に区分けした上で、各区分におけるハッブル定数を算出したところ、その値は区分によって異なることが明らかになったといいます。宇宙では遠くにある天体ほど過去の姿を見せていることになりますから、距離によって変化がみられるということは、すなわち時代によってハッブル定数が変化していることを意味します。

前述のように、ハッブル定数は算出する方法によってその値が異なり、現在の宇宙における超新星や変光星の観測データをもとに算出した値のほうが大きく、初期の宇宙に由来するCMBの観測データをもとに算出した値のほうが小さいことが知られています。発表によると、今回得られたハッブル定数の値の変化にも、これまでに算出されてきた値と同様の傾向が見られたといいます。

国立天文台では、今回の研究で示されたハッブル定数の変化について、観測の選択効果(観測対象の選択や測定の方法に由来する偏り)や超新星の性質の時間変化が影響した可能性もあるものの、膨張宇宙のモデルにおいて定数(一定)とされてきた暗黒エネルギーの影響が、時間とともに変化していることで説明できるかもしれないと言及。もしも暗黒エネルギーの影響によるものであれば、宇宙を支配する物理法則の見直しが迫られる可能性があるといいます。研究グループでは、今後も解析データを増やして研究を続ける予定です。

 

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Image Credit: 国立天文台
Source: 国立天文台
文/松村武宏

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