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ハワイと宇宙から赤外線・可視光線・紫外線で撮影された木星の姿

sorae.jp 2021年5月24日 10時43分

【▲ 左から赤外線、可視光線、紫外線で撮影された木星(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA/NASA/ESA, M.H. Wong and I. de Pater (UC Berkeley) et al.)】

こちらの画像、太陽系外惑星や褐色矮星などの想像図を木星の写真と並べたもののようにも思えますが、実はどれも同じ時刻に撮影された木星です。左から順に赤外線、可視光線、紫外線の波長帯で木星を捉えたものになります(人の目には見えない赤外線と紫外線で撮影された画像は擬似的に着色されています)。

観測に用いられたのは、赤外線がハワイのマウナケア山にあるジェミニ天文台の「ジェミニ北望遠鏡」に設置されている近赤外線撮像装置(NIRI)、可視光線と紫外線が「ハッブル」宇宙望遠鏡の広視野カメラ3(WFC3)です。いずれも日本時間2017年1月12日0時41分に同時に撮影されました。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡によって可視光線で撮影された木星(Credit: NASA/ESA/NOIRLab/NSF/AURA/M.H. Wong and I. de Pater (UC Berkeley) et al., Acknowledgments: M. Zamani)】

天体をさまざまな波長の電磁波で観測(多波長観測)すると、特定の波長だけで観測した場合にはわからなかった性質や構造が見えてきます。たとえば人の目でも見える可視光線で印象的な「大赤斑」は紫外線でもよく目立ちますが、赤外線では暗く写っています。各波長で撮影された大赤斑を比べると、可視光線で赤く見える部分よりも、赤外線で暗く見える部分のほうが大きいこともわかります。

【▲ ジェミニ北望遠鏡によって赤外線で撮影された木星(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA, M.H. Wong (UC Berkeley) et al., Acknowledgments: M. Zamani)】

また、赤外線では赤道の北側にある雲が少ない「ホットスポット」と呼ばれる特徴が明るく見えていますが、可視光線と紫外線では暗く写っています。いっぽう、東西の方向に7万2000kmも伸びているという北半球の「ブラウンバージ」(サイクロンのような渦、もしくは複数の渦のつらなり)は、赤外線だけでなく可視光線でも明瞭です。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡によって紫外線で撮影された木星(Credit: NASA/ESA/NOIRLab/NSF/AURA/M.H. Wong and I. de Pater (UC Berkeley) et al., Acknowledgments: M. Zamani)】

画像を公開した米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、木星の姿が波長によって異なって見えるのは、可視光線や紫外線が木星の大気中に存在する化合物(可視光線や紫外線の一部を吸収する発色団)の影響を受けているのに対し、赤外線は雲の厚さの影響を受けている(雲が薄いところは明るく、厚いところは暗く見える)から。木星で雷が発生する嵐の立体的な構造や、大赤斑にある雲が薄い部分を明らかにしたMichael Wong氏(カリフォルニア大学バークレー校)らは、こうしたジェミニ北望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された画像に加えて、アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ジュノー(Juno)」による雷の観測データを用いて研究を行っています。

関連:木星大気の内側を「ラッキー・イメージング」を用いた赤外線画像で探る

公開された木星の画像における各特徴の位置と名称を示した図(日本語表記は筆者が追記。Credit: NASA/ESA/NOIRLab/NSF/AURA/M.H. Wong and I. de Pater (UC Berkeley) et al.)

 

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Image Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA/NASA/ESA, M.H. Wong and I. de Pater (UC Berkeley) et al.
Source: NOIRLab
文/松村武宏

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