ヴァージン・ギャラクティックは日本時間2021年5月23日未明、宇宙船「VSSユニティ(スペースシップツー)」による有人宇宙飛行を実施しました。
同社のフレドリック・スターカウ(Frederick “CJ” Sturckow)飛行士とデヴィッド・マッケイ(David Mackay)飛行士の2名が搭乗したVSSユニティは、空中発射母機「VMSイブ(ホワイトナイトツー)」に抱えられてニューメキシコ州のスペースポート・アメリカを離陸。成層圏で切り離された後にロケットエンジンを点火したVSSユニティはマッハ3の速度で上昇し、最高高度約89.23km(55.45マイル)の宇宙空間(※)へ到達した後にスペースポート・アメリカへと無事帰還しました。
※…国際的な定義では高度100km以上が宇宙とされているが、米空軍は高度80km以上と定義している
ヴァージン・ギャラクティックにとって3回目の有人宇宙飛行となった今回のフライトは、商業用宇宙港として建設されたスペースポート・アメリカからの初の有人宇宙飛行となりました。飛行中には同社の収益源となるアメリカ航空宇宙局(NASA)の出資による科学実験が行われた他に、改修された水平尾翼やフライトコントロールのテストも実施されています。
▲ヴァージン・ギャラクティックが公開している今回のフライトのダイジェスト▲
(Credit: Virgin Galactic)
これまでにアメリカから宇宙空間へ到達した有人宇宙船は、ケネディ宇宙センターがあるフロリダ州と、ヴァージン・ギャラクティックが以前にフライトを実施していたカリフォルニア州から飛び立ったことがありますが、ここに3番目の州としてニューメキシコ州が加わったことになります。また、スターカウ飛行士はかつて宇宙飛行士としてNASAに所属しており、スペースシャトルで4回の宇宙飛行を経験。2018年12月にVSSユニティが初めて宇宙空間に到達したフライトの際にも搭乗していたことから、スターカウ飛行士は3つの州すべてから宇宙空間へ飛び立ったことのある人物となりました。
なお、今回のVSSユニティによるフライトは2020年12月以来の実施となります。前回の飛行では母機から切り離されたVSSユニティがエンジンを正常に点火することができず、宇宙空間へ到達せずに地上へと帰還しました。ヴァージン・ギャラクティックによると、エンジンが点火できなかったのは電磁障害(EMI)が原因とされており、今回のフライトではその対策も検証されています。
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Image Credit: Virgin Galactic
Source: ヴァージン・ギャラクティック
文/松村武宏