銀河団(数百個の銀河がお互いの重力で引き合って形成された銀河の集団)はどのようにして形成されたのでしょうか?
大宇宙の変化はあまりにもゆっくりしているので、われわれ人間はその動きを見ることができません。そこで、その動きを速くして見せてくれるコンピュータシミュレーションという方法が作られています。
こちらのアニメーション動画は「IllustrisTNG」と呼ばれるプロジェクトによる銀河団形成のシミュレーション(「TNG50」)の成果です。
動画の前半の部分は、水素を主とした宇宙ガス(星間ガス)が銀河や銀河団に進化していく様子を、宇宙の初期から今日に至るまで追跡しています。明るい色はより速く移動するガスを示しています。
宇宙が成熟するにつれて、ガスは「重力の井戸」(gravitational well:大きな天体による重力に引き寄せられること)に落ち、銀河が形成され、回転し、さらに銀河が衝突・合体します。その間、銀河の中心にブラックホールが形成され、周囲のガスが高速で放出されます。
動画の後半では、銀河が「潮汐の尾」(tidal tail:銀河間の潮汐力によって生じる細長い星間ガスの領域)を伴って集合していく様子が映し出されます。
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TNG50によるブラックホールからの流出は驚くほど複雑で、詳細は私たちの実際の宇宙と比較・検討されています。初期の宇宙でガスがどのように合体したかを研究することは、地球や太陽、太陽系がどのように形成されたかを人類が理解するのに役立ちます。
なお、この動画では有名な「運命」(ベートーベン交響楽第5番)がBGMとして付けられています。宇宙の進化は運命づけられているようにも思えますが、われわれ人間はその運命に抗することができる存在と捉えることができるようにも思います。
Video Credit: IllustrisTNG Project; Visualization: Dylan Nelson (Max Planck Institute for Astrophysics) et al.
Music: Symphony No. 5 (Ludwig van Beethoven), via YouTube Audio Library
Source: APOD
文/吉田哲郎