オリオン大星雲の上を横切る明るい縞模様はいったい何でしょうか?
そのほとんどは、地球を周回する多数の静止衛星からの太陽光が反射したものです。薄暮の空に浮かぶ連続した点のように目には見えますが、スペースX社のスターリンクを含む通信衛星の増加は、多くの天文学者に不安を与えています。
スターリンクなどの「衛星コンステレーション」(一群の人工衛星により構築されるシステム)は、衛星を使ったグローバルな通信をより速くし、現在サービスが行き届いていない地方に、デジタルサービスを提供するのに役立つという良い面もあります。
一方で、これらの低軌道衛星を利用することで、日没後や夜明け前に撮影された画像を必要とする観測プログラムなど、一部の深宇宙探査プログラムの実施が難しくなるというマイナス面もあります。将来的には、より高い軌道で機能する衛星の配備が計画されており、地上の大型望遠鏡で夜間にいつでも行える深宇宙探査に影響を与える可能性があります。
2020年9月10日付けの「サイエンティフィック・アメリカン」の記事によると、スペースX社も太陽光の反射を抑える「ダークサット(DarkSat)」などの取り組みを行っていますが、まだまだ明るすぎるとの指摘もあります。
長期的には、衛星コンステレーションがより一般的になるにつれて、将来の企業が天文学者と妥協することなく衛星を打ち上げる可能性が懸念されています。
いま重要なことは、天文学者たちと民間衛星事業者との間の団結とパートナーシップ精神を拡大することであるとしています。
関連:ダークサットが「光害」を軽減。石垣島天文台によるスターリンク衛星の観測結果
冒頭の画像は2019年12月に撮影されたもので、背景のオリオン大星雲を強調するために撮影されたものや、通過する衛星を強調するために撮影されたものなど、3分間露出した65枚以上の画像をデジタル合成したものです。
※訂正:誤訳を修正いたしました。冒頭の写真の解説が「スターリンク」ではなく「静止衛星」に修正し、それに伴う一部の文章を修正しております。ご迷惑をおかけいたしまして申し訳ございません。(6月6日午前)
Image Credit:Amir H. Abolfath、CTIO, NOIRLab, NSF, AURA and DECam DELVE Survey
Source: APOD、SCIENTIFIC AMERICAN
文/吉田哲郎