欧州宇宙機関(ESA)は5月19日 、南極大陸から巨大な氷山「A-76」が誕生したと発表しました。
A-76のサイズは長さが約170km、幅は約25km。面積は約4320平方キロメートルで富山県と同程度です。この巨大氷山は南極半島の東側に広がるウェッデル海に張り出したロンネ棚氷(たなごおり)から分離しました。
南極大陸はたいへん分厚い氷に覆われています。その厚さは平均2500メートルです。このように南極大陸全体を覆う厚い氷のことを氷床といいます。
陸上にあった氷床はその重さによって海に向かってゆっくりと滑り落ちていきます。海の上に押しだされたときに割れないで海に浮かんだ部分が棚氷で、棚氷の一部が割れて海に流れ出たものが氷山となります。
棚氷が割れて氷山ができるのは周期的な現象であり、気候変動とは直接関係ないと考えられていますが、気温や海流の温度の上昇など南極付近の環境変化と棚氷や氷河の後退との関係が調査されています。
また、巨大氷山の漂流は周辺海域の環境や航海の安全に影響を与える可能性があり、継続的な監視が必要です。
なお、A-76はロンネ棚氷から分離した時点では世界最大の巨大氷山でしたが、5月26日に一部が割れてA-76A、A-76B、A-76Cの3つに分割されました。ESAによると、この時点で世界最大の氷山は「A-23A」(面積約3880平方キロメートル)とされています。
A-76氷山を観測したレーダー衛星「Sentinel-1(センチネル1)」は、欧州宇宙機関の地球観測プログラム「コペルニクス計画」によって開発された地球観測衛星です。
Sentinel-1は2014年と2016年に打ち上げられた2基の衛星によるシステムで、12日周期で地球を周回しています。2基が同じ軌道上を互いに180度の位置関係で周回するため実質6日周期での観測が可能です。
Sentinel-1の画像は「sentinel-hub」で研究者や専門家だけでなく無償で広く一般に公開されています。氷山が誕生した5月13日前後の画像も閲覧可能です。興味がある方はいちど巨大氷山誕生の観測画像をご覧になってみてはいかがでしょうか。
Image Credit: ESA , Shutterstock
Source: ESA
文/sorae編集部