こちらは「おとめ座」の方向およそ9800万光年先にある銀河「NGC 4680」です。中心部分の黄色みがかったバルジから青い渦巻腕が伸びる姿は一見すると渦巻銀河のようですが、腕は必ずしも明瞭ではなく、1本は途中から先端にかけて拡散して広がっているようにも見えます。
欧州宇宙機関(ESA)によると、実際のところNGC 4680は分類が難しい銀河のようです。フランスのストラスブール天文データセンターが運用するデータベース「SIMBAD」では、NGC 4680の形態は渦巻銀河と棒渦巻銀河の中間(SABa)に分類されていますが、このように渦巻銀河のひとつとされることもあれば、渦巻銀河と楕円銀河の中間にあたるレンズ状銀河に分類されることもあるといいます。
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銀河は永遠に同じ姿をしているのではなく、時が経つにつれて銀河の姿は変化していくとみられています。たとえば特徴的な渦巻腕を持つ渦巻銀河は、別の銀河との衝突・合体や激しい星形成活動を経験することで、目立った構造を持たない楕円銀河に進化すると考えられています。また、衝突や合体が進行していることを示す特異な姿をした相互作用銀河も、これまでに数多く観測されています。
現在の天の川銀河は渦巻腕を持つ棒渦巻銀河に分類されていますが、今から数十億年後に「アンドロメダ銀河(M31)」と衝突・合体することで、1つの楕円銀河になるとも予想されています。両銀河の合体は太陽の恒星としての寿命が尽きる頃の話ですが、その後にはどのような姿の銀河が誕生することになるのでしょうか。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による光学および赤外線の観測データをもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2021年6月7日付で公開されています。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, A. Riess et al.
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏