アメリカ、ラトガース大学の研究チームは、1300万光年離れた36個の矮小銀河で星の形成率が同期していたとの研究結果を発表しました。
36個の矮小銀河における恒星の形成率は、60億年前から同時に減少し、30億年前から同時に増加に転じました。標準的な銀河の形成に関する理論では100万光年以上離れた銀河で星形成率の同期は発生しないはずです。
これは、現在の標準理論に対する反証であり、宇宙の理解を深める可能性のある予期しない発見です。
■銀河の形成とダークハロー天の川銀河のような一般的な銀河の形成にはダークマターが関わっていると考えられています。
宇宙初期のダークマターの密度揺らぎをきっかけとして、ダークハローが形成されます。
ダークハローとはダークマターが重力によって集積したものです。ダークハローは合体を繰り返しながら成長していきます。その後、水素ガスがダークマターの重力に引き寄せられて星が形成されたと考えられています。したがって、ダークハローは銀河の母体ということができます。
ダークハローの広がりは観測される銀河のサイズの約10倍程度であることが分かっています。天の川銀河の場合、直径約10万光年なので、ダークハローの広がりは約100万光年です。
■銀河のベビーブームの解明今回発見された銀河の星形成の同期は、環境の大規模な変化に対応していると考えられます。それは巨大なガスの雲との遭遇かも知れません。その背後にはより大きなダークハロー(銀河群や銀河団を宿すハロー)の存在が考えられます。
現在の銀河成長モデルをどれだけ修正する必要があるかはまだわかっていないため、発見の完全な影響はまだわかっていません。
影響の範囲を調査するためには、この「ベビーブーム」が天の川銀河からどれだけ外側に広がっているかについてその限界を知る必要があります。
今年10月にアメリカ航空宇宙局(NASA)が打ち上げる予定の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」による、より詳しい観測が期待されます。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA
Source: RUTGERS
参考: 天文学辞典 , 筑波大学計算科学研究センター
文/sorae編集部