約13000年前に地球に衝突したと考えられる彗星の破片の集団が、人類の文明の起源を形作った可能性があるという研究結果が発表されました。
恐竜の絶滅以来、最も壊滅的な天体との衝突は、人類の社会のあり方が大きく変化した時期と一致する可能性があると研究者たちは述べています。
この彗星の衝突は多くの大型動物を絶滅させ、1000年以上続いた「ヤンガードリアス」(Younger Dryas)と呼ばれる小氷河期(気候寒冷期)をもたらしたと考えられています。
今回の分析結果は、西南アジアの「肥沃な三日月地帯」と呼ばれる地域で新石器時代が始まる前に衝突が起きたという主張を裏付けるものです。
現代のエジプト、イラク、レバノンなどの国にまたがるこの地域の人類は、この時期に狩猟採集生活から農業を中心とした生活に移行し、定住地を作りました。
この彗星衝突説は2007年に提案されて以来、激しい議論を呼び、多くの学術研究の対象となってきました。
今回、エジンバラ大学の研究者たちは、衝突が起こった可能性を評価する証拠と、その出来事がどのように展開したかを検討しました。
研究チームは、約13,000年前に彗星が衝突したという説を裏付ける多くの証拠があるとしています。研究者たちは、4つの大陸の地質データを分析し、特に、最大の破片が衝突したと考えられる北米とグリーンランドのデータを収集しました。
分析の結果、過剰な量のプラチナ、超高温で溶けた物質の痕跡、彗星の内部に存在し、高エネルギーの爆発で形成されることが知られているナノダイヤモンドが検出されました。これらの証拠はすべて、衝突説を強く支持するものであると研究者たちは述べています。
研究チームは、この大災害が地球の気候にどのような影響を与え、それに伴って人類の人口変化や動物の絶滅にどのような影響を与えたのかについては、さらなる研究が必要だとしています。
また、研究を主導してきたエジンバラ大学工学部のMartin Sweatman博士は、「世界最古の神殿」とも言われる「ギョベクリ・テペ」(トルコにある新石器時代の遺跡で、2018年世界遺産に登録が決定)の巨大な石柱はこの大災害の記念碑ではないかと語っています。
発掘調査は50年以上も続いており、天文考古学的な新たな発見も待たれます。
Image Credit: Comet Research Group、TRT(トルコ国営放送)/ Shutterstock
Source: The University of Edinburgh / 論文、TRT(トルコ国営放送)
文/吉田哲郎