こちらは南天の「ちょうこくぐ座」(彫刻具座)の方向を捉えた画像です。遠方の宇宙に存在する無数の銀河を背景に、衝突する2つの銀河が写っている……ように見えますが、実はこの2つの銀河、欧州宇宙機関(ESA)によると衝突しているわけではないようです。
画像の中央付近に写る星々でできた雲のような銀河は、およそ2260万光年先にある矮小不規則銀河「PGC 16389」です。その右上に写っている別の銀河「APMBGC 252+125-117」はPGC 16389よりも遠くにあり、地球からはたまたま同じ方向に見えているとのこと。画像には「A cosmic optical illusion」(宇宙の錯視)というタイトルが付けられています。
衝突・合体しつつある相互作用銀河のように見えるものの、実際には違うという銀河はほかにもあります。以前soraeでご紹介した「NGC 3314」の場合、数千万光年離れた2つの渦巻銀河(手前のNGC 3314aと奥のNGC 3314b)が重なって見えているのだといいます。
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いっぽう、遠く離れた2つの銀河と地球が偶然直線状に並ぶと、時に重要な知見がもたらされることがあります。それぞれの銀河と地球の位置関係によっては、光の進む向きが手前の銀河の重力によって曲げられることで、奥の銀河の像が歪んで見える「重力レンズ効果」が生じることがあるからです。奥の銀河の像は歪むと同時に拡大もされているため、観測データを適切に処理することで、望遠鏡本来の性能よりも高い解像度で銀河の性質を調べられる場合があるのです。
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冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」による可視光線と近赤外線の観測データをもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2013年8月19日付で公開されています。
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, Acknowledgement: Luca Limatola
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏