こちらは「しし座」の方向およそ3600万光年先にある銀河「M105(Messier 105)」の姿です。銀河といえば天の川銀河の想像図やアンドロメダ銀河(M31)のような渦巻銀河/棒渦巻銀河の姿を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、楕円銀河に分類されているM105はぼんやりと輝いていて、渦巻腕のようなはっきりとした構造は見当たりません。
渦巻銀河と比べて目立たない印象も受けるM105ですが、中心の狭い領域から強い電磁波が放射される活動銀河核を持つ銀河として知られていて、そのエネルギー源は周囲から活発に物質を取り込む超大質量ブラックホールだと考えられています。M105の中心付近にある星々の動きをもとに、ブラックホールの質量は太陽の約2億倍と推定されています。
また、古い星で構成される楕円銀河では新しい星を生み出す星形成活動がほとんど起きないと考えられているものの、M105には若い星々や星団が存在することが「ハッブル」宇宙望遠鏡の観測によって明らかになっています。欧州宇宙機関(ESA)によると、M105では太陽と同程度の星が1万年ごとに誕生するようなペースで星形成が進んでいるとみられています。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」による可視光線および近赤外線の観測データをもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「The heart of the Lion」として、ESAから2019年1月7日付で公開されています。
なお、ハッブル宇宙望遠鏡はハードウェアの問題が生じたために6月13日から科学観測を中断しています。原因は電力供給を安定化させるパワーコントロールユニットにあるとみられており、7月15日からシステムをバックアップに切り替える作業が運用チームによって進められています。
打ち上げから今年で31年、スペースシャトルによる最後のサービスミッションから12年に渡り活躍し続けてきたハッブル宇宙望遠鏡は、これまでにも度々トラブルを乗り越えてきました。今回も作業が無事成功し、科学観測が再開されることを願うばかりです。
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Image Credit: ESA/Hubble & NASA, C. Sarazin et al.
Source: ESA/Hubble / NASA
文/松村武宏